「以前のようにやる気が出ない」
「何をしても楽しく感じられない」
「仕事のことを考えると苦しくなる」
「自分を責め続けてしまう」
このような状態が続くと、「自分はうつ病なのではないか」と不安になることもあると思います。ここでは、うつ病の症状や原因、症状が続きやすくなる悪循環や治し方について解説します。
この記事のポイント
- うつ病の症状と特徴
- うつ病の原因と長引く理由
- うつ病の治療と認知行動療法(CBT)
うつ病とは?
気分の落ち込みだけではなく、考え方や行動、睡眠や食欲など、心と身体のさまざまな面に影響を及ぼす病気です。「気持ちの問題」や「性格の弱さ」で起こるものではなく、睡眠や食欲、疲れやすさ、集中力など、身体を含めたさまざまな面に影響が現れることがあります。
うつ病の人はどれくらいいる?
うつ病の生涯有病率(一生のうちに一回以上病気になる人の割合)は、世界的には11~15%、日本では5~6%とされています。また、有病率には性差があり、女性は男性の約2倍とされています。
このように、うつ病は決して珍しい病気ではありません。
気分と病気の違いは?怠けているわけではないの?
誰しも、うまくいかないことがあって落ち込んだり、大切な物を失って悲しい気持ちになったり、仕事や勉強を頑張りすぎて疲れてしまったりすることがあります。これは自然な感情の変化であり、時間とともに回復していきます。
うつ病の場合には、仕事や家事など、やらなければならないことは分かっているのに、心身のエネルギーが低下していることで、以前のように行動できなくなることがあります。こうした状態が続き、仕事や家庭生活などに支障が出ている場合には、うつ病などの可能性が考えられます。
以前のように行動できなくなると、「もっと頑張らないといけない」と考えて、自分を責めてしまうことがあります。その結果、つらさがさらに強くなってしまうこともあります。
うつ病の症状
うつ病では、気分だけではなく、身体や思考の面にも症状が現れることがあります。
気分面
- 落ち込む、気持ちが晴れない
- これまで楽しめていたことに興味がわかない、楽しめない
身体面
- 食欲がない、または食べすぎる
- 眠れない、または眠りすぎる
- 動作が遅くなったり、落ち着かずそわそわしたりする
- 疲れやすい、何をするにもおっくうに感じる
思考面
- 集中できない、頭が働かないように感じる
- 自分には価値がない、悪いことをしたと自分を責めてしまう
- 消えてしまいたい、死にたいと考えてしまう
これらの症状のうち、5つ以上が2週間以上続き、仕事や家庭生活などに支障が出ている場合には、うつ病などの可能性が考えられます。
うつ病の中核となる症状は、気分の落ち込み(抑うつ気分)や、これまで楽しめていたことに興味や喜びを感じにくくなること(興味・喜びの喪失)です。
ただし、すべての症状が現れるわけではなく、人によって症状の現れ方や程度は異なります。身体の不調が目立ち、「気分が落ち込んでいる」という自覚があまりない
→ 「死にたい」「消えてしまいたい」と感じるときの相談や支援についてはこちら場合もあります。
うつ病の初期症状と重症度
うつ病の始まりには、
「以前ならできていたことができない
「仕事でミスが増える」
「何をするにもおっくうに感じる」
など、気づかないうちに少しずつ変化が現れることがあります。
一方で、症状が強くなると、仕事や家庭生活への影響が大きくなったり、自分の身の回りのことが難しくなったりすることもあります。医療機関では、症状の種類や強さだけでなく、生活への影響なども含めて、うつ病の程度を判断します。
うつ病の始まりから症状が強くなっていくまでの変化について、架空の事例を使って紹介しています。
うつ病の診断はどうやって行う?
うつ病の診断は、基本的に医師の問診(詳しい聞き取り)によって行われます。いつから、どのような症状があり、学校や仕事、家庭生活にどのような影響が出ているのかなどを確認していきます。
また、気分の落ち込みや疲れやすさなどは、うつ病以外の病気や状態でもみられることがあります。そのため、ほかの病気や状態が関係していないかについても確認したうえで、診断が行われます。
症状の程度を確認したり、診断の補助として心理検査が使われることもあります。
たとえば、PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)は、うつの程度を評価するために用いられる心理検査の一つです。PHQ-9を使って自分の現在の状態を整理したい方や、相談する目安を知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→うつ病のセルフチェック|PHQ-9で症状の程度を確認する方法
うつ病の原因
うつ病の原因を一つに決めることはできません。仕事や人間関係などの環境要因だけでなく、遺伝や体質、性格傾向、これまでの生活経験など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
また、大きなストレスをきっかけにうつ病になる人もいれば、複数のストレスが重なって発症する人、自分にとって苦手な環境が続くことで心身の負担が大きくなる人もいます。
そのため、うつ病について考えるときには、「何が原因だったのか」を一つに決めるのではなく、その人がどのような環境で生活し、どのような特徴や生活歴を持っているのかを含めて考えることが大切です。
うつ病の原因について、ストレス脆弱性モデルなどをもとに詳しく解説しています。
→ うつ病の原因|ストレス・性格・遺伝・環境など、さまざまな要因から考える
うつ病が長引く理由は?
うつ病が長引く背景には、さまざまな要因がありますが、その一つとして悪循環が関係していると考えられています。
例えば、うつ病になると、気分が落ち込み、何をするにもおっくうになって活動が減ることがあります。活動が減ると、楽しさを感じる機会や人との関わりも少なくなり、さらに気分が落ち込むという悪循環につながることがあります。
また、「自分は何をやってもダメだ」「このまま良くならないのではないか」といった考えが強くなることで、自分を責めたり、行動を起こしにくくなったりすることもあります。そのため、悪循環をどのように断ち切っていくかがポイントになります。
→ うつ病の悪循環と、その悪循環に働きかける認知行動療法(CBT)についてはこちら
うつ病の治療
うつ病の治療では、薬物療法や認知行動療法(CBT)などの心理療法が治療の選択肢となります。症状の程度やこれまでの経過、生活状況などを踏まえて、薬物療法や心理療法を単独で行う場合もあれば、組み合わせて行う場合もあります。
日本うつ病学会の「うつ病診療ガイドライン2025」でも、薬物療法や構造化された精神療法などが治療の選択肢として扱われています。
「精神療法って何?」「心理療法やカウンセリングとはどう違うの?」という方は、以下の記事で詳しく解説しています。
→ 精神療法・心理療法・カウンセリングの違い|精神科の診察とどう違う?
また、治療を進めるうえでは、十分な休養をとることや生活リズムを整えることも大切です。症状によって仕事を続けることが難しい場合には、医療機関と相談しながら、休職を検討することもあります。
関連記事: 休職から復職までの進め方
薬は飲まないといけないの?
薬の治療に抵抗があり、「薬を使わずに改善する方法はないの?」と思う方もいると思います。
うつ病では、症状の程度や状態に応じて薬物療法が用いられます。一方で、すべての人に薬物療法が必要というわけではなく、心理療法など、薬物療法以外の治療が選択肢となることもあります。
どのような治療を行うかは、症状の程度やこれまでの経過、生活状況などを踏まえて検討されます。
薬を飲んでいるのに効かないときは?
最初に使用した薬で十分な改善が得られない人もいます。その場合には、薬の量を調整したり、別の抗うつ薬に変更したりするなどの対処がなされます。
そのため、「薬が効かない=良くならない」ということではありません。医師と相談しながら、薬の種類や量、ほかの治療方法を含めて調整していくことになります。
関連記事:うつ病は薬なしでも治る?
薬以外の選択肢は?
うつ病では、薬物療法だけでなく、認知行動療法(CBT)などの心理療法も治療の選択肢となります。複数のガイドラインで、うつ病に対する心理療法の一つとして認知行動療法が推奨されています。
認知行動療法は、薬が効かなかった場合だけに行うものではありません。薬物療法と組み合わせて行うことも、薬を使わずに取り組むこともあります。
どのような方法が適しているかは、症状の程度やこれまでの経過、生活状況、本人の希望などによって異なります。医師や心理職などの専門家と相談しながら、自分に合った方法を検討していくことが大切です。
認知行動療法(CBT)がどのような心理療法なのか、具体的に知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 認知行動療法(CBT)ってどんなもの?
気分の落ち込みにはさまざまな背景があります
気分が落ち込むからといって、すべてがうつ病とは限りません。医療機関では、症状の種類や程度、続いている期間、これまでの経過、生活への影響などを総合的に評価し、
- うつ病の診断基準を満たす状態なのか
- 適応障害など、別の状態が関係しているのか
- 双極症など、他の病気が関係していないか
などを検討します。
うつ病と診断されて治療を続けていても、なかなか症状が改善しなかったり、復職したあとに再び体調を崩したりすることがあります。そのような場合には、うつ病そのものだけでなく、ほかの問題が重なっていないかを振り返ることもあります。
→ うつ病がなかなか改善しないときに考えたいこと|双極症・発達症・不安症
また、診断基準を満たさない場合でも、気分の落ち込みやストレスによって、つらさや生活上の困りごとを抱えていることがあります。「病気ではないから我慢するしかない」と考える必要はありません。
認知行動療法では、今の生活の中で何に困っているのかを整理し、できることから対処していきます。つらさを一人で抱え込まず、生活への影響が大きくなる前に、専門家に相談することも一つの方法です。
まとめ
うつ病は、気分の落ち込みだけではなく、考え方や行動、睡眠、食欲、疲れやすさなど、心と身体のさまざまな面に影響を及ぼす病気です。また、気分の落ち込みがあるからといって、すべてがうつ病とは限りません。
適応障害や双極症など、別の状態が背景にあることもあれば、「診断がつくほどではないけれど、毎日がつらい」と感じながら過ごしている方もいます。
症状が続いている場合には、一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談して、自分の状態を確認することも大切です。
認知行動療法は、うつ病に対する治療法の一つとして用いられるだけでなく、診断の有無にかかわらず、生活の中で何に困っているのかを整理し、その方に合った対処方法を一緒に考えていくこともできます。
次の記事では、認知行動療法(CBT)がどのように悪循環に働きかけ、回復を支えていくのかを詳しくご紹介します。
▶ 次の記事はこちら:うつ病に対する認知行動療法(CBT)の進め方
参考文献・参考資料
- アメリカ精神医学会(2023).『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』.医学書院.
- 日本うつ病学会 うつ病診療ガイドライン作成ワーキンググループ(2025).『うつ病診療ガイドライン2025』.日本うつ病学会.
- 川上憲人(主任研究者).平成18年度厚生労働科学研究「こころの健康についての疫学調査に関する研究」.
- National Institute for Health and Care Excellence. (2022). Depression in adults: treatment and management (NG222).
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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