「最近、気分が落ち込むことが増えた」
「以前は楽しめていたことが、あまり楽しく感じられない」
「疲れていて、何をするにも気力がわかない」
このような変化が続くと、「うつ病なのではないか」と気になったり、調べたくなることもあると思います。
うつ病が気になるときには、医療機関で症状について相談する方法があります。また、まず自分の現在の状態を整理するために、心理検査も活用できます。
ここではPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)を使って、現在の抑うつ症状の程度を確認する方法を紹介します。
この記事のポイント
- PHQ-9では、過去2週間の抑うつ症状について確認できます
- 合計点が高いほど、抑うつ症状が強い可能性があります
- PHQ-9だけでうつ病と診断することはできないため、点数だけで判断しないことが大切です
PHQ-9とは?
PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)は、抑うつ症状を確認するための自記式質問票です。
9つの質問からなり、それぞれについて「この2週間、どのくらいの頻度でその症状があったか」を回答します。
各項目を0~3点で計算し、合計点は0~27点になります。
PHQ-9は、抑うつ症状のスクリーニングや症状の程度の評価、経過を確認するためなどに用いられています。
PHQ-9でセルフチェック
PHQ-9は、過去2週間の抑うつ症状について確認する9項目の質問票です。
実際の質問項目は、日本不安症学会が公開している「PHQ-9日本語版(2018)」で確認できます。
PHQ-9の点数はどう見る?
9項目の合計点は0~27点です。
| 合計点 | 抑うつ症状の程度 |
|---|---|
| 0~4点 | 最小 |
| 5~9点 | 軽度 |
| 10~14点 | 中等度 |
| 15~19点 | 中等度~重度 |
| 20~27点 | 重度 |
点数が高いほど、抑うつ症状が強いことを示します。
ただし、この点数だけで「うつ病である」と判断することはできません。
PHQ-9は、抑うつ症状の程度や、うつ病の可能性を確認するためのスクリーニングの道具です。診断には、医師による診察や面接などを含めた総合的な判断が必要になります。
10点以上なら、うつ病なのでしょうか?
10点以上だったからといって、必ずうつ病というわけではありません。
日本語版PHQ-9の研究では、10点以上をうつ病の可能性を調べるための一つの基準として使用できることが示されています。2018年の日本のプライマリ・ケア患者を対象とした研究では、10点以上をカットオフとした場合、感度90.5%、特異度76.6%でした。
ここでいう感度は、実際にうつ病の人をどのくらい見つけられるかを示す指標です。一方、特異度は、うつ病ではない人をどのくらい正しく「うつ病ではない」と判断できるかを示す指標です。
感度90.5%というのは、実際にうつ病だった人の約90%が10点以上になったということです。一方、特異度76.6%というのは、実際にはうつ病ではなかった人の約77%が10点未満だったということです。
このように、10点以上になる人の中には、実際にはうつ病ではない人も含まれます。一般的にスクリーニング検査は、可能性のある人を広く拾い、早めの相談や対処につなげることを目的としているため、診断を確定する検査とは異なります。
実際にうつ病かどうかを判断するときには、
- どのような症状があるのか
- いつ頃から症状が始まったのか
- どのくらい続いているのか
- 仕事や家事、対人関係にどの程度影響しているのか
- 最近のストレスや生活上の変化
- 身体的な病気や服薬の影響
- 過去に躁状態・軽躁状態がなかったか
なども確認します。
そのため、10点以上だった場合は「うつ病だ」と決めるのではなく、一度専門家に相談するきっかけとして考えるとよいでしょう。
点数が低ければ大丈夫?
PHQ-9の点数が低かったとしても、必ずしも「問題がない」という意味ではありません。
日本の研究では、10点以上を基準にした場合の感度は90.5%でした。これは、実際にうつ病だった人の約90%が10点以上になったという意味で、反対に約10%は10点未満でした。
そのため、10点未満だから「うつ病ではない」と判断することはできません。
たとえば、不安や心配が強い場合や、仕事や人間関係のストレスが大きい場合などには、PHQ-9の点数だけでは現在の困りごとを十分に表せないことがあります。
点数にかかわらず、こんなときは相談を検討してみましょう
PHQ-9の点数は、現在の抑うつ症状の程度を振り返るための一つの目安です。ただし、点数だけで相談が必要かどうかが決まるわけではありません。
例えば、次のようなことがある場合は、専門家への相談を検討してみてもよいでしょう。
- 気分の落ち込みや意欲の低下、疲れやすさなどが続いている
- 以前はできていたことが難しくなり、仕事や家事、学校生活などに影響が出ている
- つらさを周囲に話せず、一人で抱え込んでいる
- 何とか日常生活を送っているものの、無理を重ねていると感じる
- 自分の状態がよくわからず、どうしたらよいか迷っている
悩みやつらさが続いている場合は、相談について考えてみましょう。
自分の状態をうまく説明できなくても大丈夫です。今感じているつらさや、生活の中で困っていることを整理することから始めることもできます。
質問9について
PHQ-9の9番目には、
「死んだ方がましだ、あるいは自分を何らかの方法で傷つけようと思ったことがある」
という質問があります。
この質問に「数日」以上当てはまった場合は、合計点だけを見て判断しないことが大切です。
死にたい気持ちや自分を傷つけたい気持ちが現在強くある場合、具体的な方法を考えている場合、一人で安全を保つことが難しい場合には、身近な人や医療機関などに早めに相談してください。
今すぐ自分を傷つける可能性が高いなど、緊急性がある場合には、119番などの救急につながる方法を利用してください。
関連記事:希死念慮とは?「死にたい」「消えたい」と感じるときのQ&A
PHQ-9はうつ病の改善をみるためにも使われます
PHQ-9は、現在の抑うつ症状を整理するための一つの方法です。
相談を始めたときだけでなく、一定期間が経過したときにもう一度回答することで、症状がどのように変化しているかを確認するためにも使われます。
うつ症状は目に見えないため、質問票を使って症状を確認することで、症状の程度やその変化を本人と支援者が共有しやすくなります。
ただし、PHQ-9の点数だけですべてを判断できるわけではありません。今の生活で何が起きているのか、何に困っているのかも一緒に見ていくことが大切です。
うつ病の認知行動療法(CBT)
うつ病に対するカウンセリングで用いられる心理療法の一つに、認知行動療法(CBT)があります。認知行動療法では、現在の環境やストレス、考え方、行動などを整理しながら、困っている問題について一緒に考えていきます。
認知行動療法では、PHQ-9のような質問票も使いながら、現在の症状や状態を整理したり、改善の程度を確認したりしながら進めていきます。
症状が強い場合には、まず症状の改善に向けた取り組みを行います。ただし、大切なのは「うつ病ではない状態になること」だけではありません。症状が改善してきた後は、自分が望む、自分らしく満足できる生活を送れているかということも大切になります。
うつ病に対する認知行動療法については、こちらの記事で詳しく説明しています。
まとめ
- PHQ-9は、過去2週間の抑うつ症状を確認する9項目の質問票です
- 合計点が高いほど、抑うつ症状が強い可能性があります
- 10点以上は、うつ病の可能性を詳しく確認するための一つの目安です
- PHQ-9の点数だけで、うつ病と診断することはできません
- 点数が低くても、つらさや生活への影響が続いている場合は相談してみましょう
関連記事
参考文献
- Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: Validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606-613.
- Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, et al. The patient health questionnaire, Japanese version: validity according to the mini-international neuropsychiatric interview-plus. Psychol Rep. 2007;101(3):952-960.
- Muramatsu K, Miyaoka H, Kamijima K, et al. Performance of the Japanese version of the Patient Health Questionnaire-9 (J-PHQ-9) for depression in primary care. Gen Hosp Psychiatry. 2018;52:64-69.
- 村松公美子・上島国利.プライマリ・ケア診療とうつ病スクリーニング評価ツール:Patient Health Questionnaire-9 日本語版「こころとからだの質問票」.診断と治療.2009;97:1465-1473.
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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