人前で話すときに強い不安を感じたり、人からどう見られているかが気になって、思うように行動できなかったりすることはありませんか。
人との交流や人前に出ることへの不安が続くと、仕事や学校、日常生活でできることが限られてしまう場合があります。
こうした不安や、人前に出ることを避ける傾向の程度を確認する方法の一つに、LSAS-J(リーボヴィッツ社交不安尺度)という質問票があります。
この記事のポイント
- LSAS-Jで社交場面の不安や回避の程度を確認
- カットオフ値は42点だが、点数だけで診断は決まらない
- 点数にかかわらず、不安やつらさが続くときは相談を検討する
LSAS-Jとは?
LSAS-Jは、社交不安症(Social Anxiety Disorder:SAD)に関連する不安や回避の程度を確認するために用いられる質問票です。Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)の日本語版で、社交不安症の症状を評価する際などに使われています。
質問は全部で24項目あり、次の2種類の場面が含まれています。
- 人前で何かをするときの場面:13項目
- 人と交流するときの場面:11項目
それぞれの場面について、不安をどの程度感じるか、また、その場面をどの程度避けるかを回答します。
LSAS-Jは、社交不安症に関連する症状の程度を把握したり、状態の変化を確認したりするために役立ちます。ただし、質問票の点数だけで社交不安症かどうかが決まるわけではありません。
社交不安症の症状や原因、認知行動療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
LSAS-Jでセルフチェックするには?
LSAS-Jは、自分で質問に回答する方法で実施できます。
質問では、この1週間に感じていた不安や、場面を避ける程度について回答します。質問票は、以下から確認できます。
不安や恐怖の程度
それぞれの場面で、どの程度不安や恐怖を感じるかを、次の4段階で回答します。
- 0:全く感じない
- 1:少しは感じる
- 2:はっきりと感じる
- 3:非常に強く感じる
場面を避ける程度
その場面をどの程度避けるかについても、次の4段階で回答します。
- 0:全く回避しない
- 1:回避する(確率1/3以下)
- 2:回避する(確率1/2程度)
- 3:回避する(確率2/3以上または100%)
この1週間に経験していない場面については、実際にその場面にいるとしたらどう感じるかを想像して回答します。
回答するときは、理想的にどう行動したいかではなく、実際に感じている不安や、普段の行動に近いものを選んでください。
LSAS-Jの点数はどう見る?
LSAS-Jは、24項目それぞれについて、不安や恐怖の程度と、場面を避ける程度を0~3点で評価します。すべての項目を合計すると、総得点は0~144点になります。
カットオフ値は42点
日本語版の信頼性と妥当性を検討した研究では、LSAS-Jのカットオフ値は42点と報告されています[1]。
カットオフ値とは、ある状態の可能性を判断する際に参考とする基準の点数です。ただし、42点以上であれば必ず社交不安症であるという意味ではありません。点数だけで診断が決まるわけではなく、実際の症状や生活への影響なども含めて考える必要があります。
点数が低ければ大丈夫?
LSAS-Jの点数が低くても、必ずしも困りごとがないとは限りません。
質問票に含まれる場面では不安を感じなくても、特定の人との交流や、自分にとって重要な場面では強い不安を感じることがあります。また、不安を感じないように準備や確認を重ねているため、表面上は問題なく過ごせている場合もあります。
点数だけで判断するのではなく、どのような場面で困っているのか、日常生活にどのような影響が出ているのかにも目を向けてみてください。
点数にかかわらず、こんなときは相談を考えてみましょう
例えば、次のようなことが続いている場合は、相談を検討するきっかけになります。
- 人前で話したり、人と交流したりするときの不安が続いている
- 人から悪く評価されることが気になり、言いたいことを伝えられない
- 不安を感じる場面を避けるために、仕事や学校、日常生活でできることが限られている
- 不安を感じないように準備や確認を重ね、疲れてしまう
- 人との交流を避けることで、やりたいことや大切にしたいことを諦めている
- 自分の状態がよくわからず、どうしたらよいか迷っている
すべてに当てはまる必要はありません。点数が高いか低いかにかかわらず、悩みやつらさが続いている場合は、相談について考えてみましょう。
自分の状態をうまく説明できなくても大丈夫です。今感じている不安や、生活の中で困っていることを整理することから始めることもできます。
LSAS-Jは症状の変化を確認するためにも使われます
LSAS-Jは、一度だけ実施するのではなく、時間をおいて再度回答することで、症状の変化を確認するためにも使われます。
例えば、以前は人前で話すことを強く避けていたけれど、少しずつ参加できるようになった、といった変化を振り返る手がかりになります。
また、社交不安症の認知行動療法(CBT)では、不安を感じる場面を整理し、取り組みやすい場面から少しずつ行動を変えていくことがあります。こうした場面を整理する際にも、LSAS-Jの回答が参考になることがあります。
ただし、点数の変化だけで状態の改善を判断するのではなく、実際の生活で何ができるようになったか、不安との付き合い方にどのような変化があったかも確認していきます。
社交不安症の認知行動療法(CBT)
社交不安症の認知行動療法(CBT)では、不安を感じる場面で浮かぶ考えや、そのときの行動に目を向けながら、不安が続く仕組みを整理していきます。
例えば、人から悪く評価されることを恐れて発言を控えたり、不安を感じる場面を避けたりすることがあります。こうした行動は、その場の不安を和らげる一方で、長い目で見ると不安が続くことにつながる場合があります。
認知行動療法では、一人ひとりの状態に合わせて、考え方や行動を少しずつ見直していきます。
認知行動療法で行う具体的な取り組みについては、こちらの記事もご覧ください。
→ 社交不安症の認知行動療法(CBT)とは?不安が続く仕組みと具体的な取り組み
まとめ
- LSAS-Jは、社交不安症に関連する不安や回避の程度を確認するための質問票です。
- 総得点は0~144点で、研究ではカットオフ値42点が報告されています。
- 点数の程度を把握するための目安もありますが、点数だけで診断や生活への影響が決まるわけではありません。
- 点数が低くても、日常生活で困っていることがあれば相談を検討できます。
- LSAS-Jは、症状の変化を振り返る際にも役立ちます。
点数は、自分の状態を知るための一つの手がかりです。点数だけにとらわれず、どのような場面で不安を感じ、生活にどのような影響が出ているのかも振り返ってみてください。
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参考文献
- 朝倉聡・井上誠士郎・佐々木史・佐々木幸哉・北川信樹・井上猛・傳田健三・伊藤ますみ・松原良次・小山司(2002).Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の検討.『精神医学』44(10),1077–1084.
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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