社交不安症とは?人からどう見られるかが気になるとき

社交不安のイラスト

「周りの人からどう思われているんだろう」
「人前で話すと緊張する」

人からどう見られるかを気にしたり、人前で緊張したりすることは、誰にでもあります。

ただ、人と関わる場面で強い不安や恐怖を感じるようになると、人を避けるようになったり、人と過ごすことが大きな負担になったりすることがあります。不安や恐怖が強く、学校や仕事、人間関係などに影響しているときは、社交不安症と呼ばれる状態にあてはまるかもしれません。

この記事では、社交不安症の特徴や診断、治療、認知行動療法(CBT)について解説します。

この記事のポイント

  • 社交不安症では、人から否定的に評価されることだけでなく、相手に迷惑をかけたり、不快な思いをさせたりすることへの恐れもみられます
  • 不安を避け続けると、生活の幅が狭くなり、学校生活や仕事の支障になることがあります
  • 治療には薬物療法やCBTがあり、不安を強める考え方や行動にも目を向けます

社交不安症(SAD)とは

社交不安症(Social Anxiety Disorder:SAD、旧称:社交不安障害)は、人と関わったり、人から注目されたりする場面で、強い不安や恐怖を感じる状態です。

たとえば、次のような場面で不安や緊張が強くなります。

  • 人前で話す
  • 人と会話する
  • 人前で字を書く
  • 会食をする
  • 電話をする

社交不安症では、「人から否定的に評価されるのではないか」という不安が大きな特徴です。

ただし、恐れの内容は「恥をかく」「変に思われる」といったことだけではありません。自分の言動や身体の反応(視線など)によって、相手に不快な思いをさせたり、迷惑をかけたりすることを心配する場合もあります。

日本で研究されてきた「対人恐怖」との関係

日本では、社交不安症と重なる特徴をもつ状態が、古くから「対人恐怖」として研究されてきました。

対人恐怖では、人から否定的に評価されることへの恐れだけでなく、自分の言動や身体の反応によって、相手に不快な思いをさせたり、迷惑をかけたりすることへの恐れがみられる場合もあります。

精神疾患の診断基準であるDSM-5では、他者に迷惑をかけることで否定的な評価を受けることへの恐れも、社交不安症に含まれています。そのため、日本で研究されてきた対人恐怖の一部は、社交不安症として理解されます[14]。

一方、対人恐怖として扱われてきた症状が、すべて社交不安症に分類されるわけではありません。

たとえば、自分の体臭が周囲の人を不快にさせていると強く気にする「自己臭恐怖」や、自分の外見に欠点があると強く気にする「醜形恐怖」などは、社交不安症とは異なる診断上の位置づけをもつ場合があります。DSM-5-TRでは、自己臭恐怖に関連する状態は「嗅覚関連づけ障害」として強迫症および関連症群に位置づけられ、身体醜形症も同じ診断群に含まれます[15]。

このように、対人恐怖と社交不安症には重なる部分がありますが、完全に同じものではありません。

醜形恐怖について解説(作成中)

「あがり症」とは違うの?

発表の前に緊張する、初対面の人と話すときに少し不安になる。こうした経験は多くの人にあります。そのため、社交不安症のつらさは「ただの緊張しやすい性格」と受け取られてしまうこともあります。

しかし、社交不安症では、不安や恐怖が強いために、次のような形で生活に支障が出ます。

  • 人前に出ることを避ける
  • 人との関わりを減らす
  • 学校や仕事で、本当はやりたいことを諦める
  • 強い負担を感じながら、なんとか参加し続ける

単に緊張しやすいということだけでなく、不安や恐怖の強さ、続いている期間、生活への影響などが重要になります。

どんな症状があるの?

人からどう見られるかが気になる

「恥をかくのではないか」「変に思われないだろうか」「失敗したらどうしよう」と、周囲の目が気になります。実際には失敗していなくても、「失敗するかもしれない」と考えるだけで、不安が強くなることがあります。

また、「自分の言動で相手を不快にさせてしまうのではないか」「迷惑をかけてしまうのではないか」と心配する場合もあります。

身体の反応が気になる

不安になると、顔が赤くなる、汗をかく、声が震える、動悸がするといった反応が起こります。すると今度は、「顔が赤いのが相手に分かるのでは」「声が震えたら恥ずかしい」と、その反応自体が気になってしまいます。

その場面を避けるようになる

不安が強い場面を避けると、そのときは楽になります。けれども、次第に動ける範囲が狭まり、学校や仕事、人間関係に影響が出てきます。避けられない場面では、強い負担を抱えたまま参加し続けることになります。

どのくらいの人がなる?

社交不安症は、決して珍しいものではありません。アメリカの成人を対象とした調査では、一生のうちに経験する人が約12%(およそ8人に1人)[^1]、1年間に経験する人が約7%(およそ15人に1人)[2]と報告されています。

社交不安症は気づかれにくい

始まるのは思春期ごろ

社交不安症は若い時期に始まることが多く、アメリカの調査では、発症年齢の中央値は13歳でした[^1]。

それでも、本人も周囲も気づかないことがよくあります。周りからは「人見知りなのだろう」「控えめな性格なのだろう」と思われ、本人も「自分の性格の問題」と考えがちです。避けたり我慢したりしながら、なんとか生活できてしまうことも、気づきにくさにつながります。

相談や受診までに時間がかかる

不安症の専門クリニックを受診した人を対象にした研究では、社交不安症の人は、ほかの不安症の人より相談や受診までの時間が長いことが報告されています[3]。

また、医療機関にかかっていても見逃されることがあります。うつ病で精神科に通っている人を対象にした研究では、通常の診察では見つかりにくく、決まった質問に沿って詳しく確認すると、社交不安症のある人が多く見つかったと報告されています[4]。

うつ病など、別の不調をきっかけに見つかることも

社交不安症は、うつ病やパニック症などと一緒にみられることがあります。そして多くの場合、社交不安症のほうが先に始まります[5]。そのため、本人が社交不安症の相談をするのではなく、気分の落ち込みなど、別のつらさがきっかけで受診し、そこで見つかることもあります。

うつ病について詳しくはこちら
→ うつ病とは?|症状・原因・治療について

ひきこもりにつながることもある

人と関わる場面を避ける状態が続くと、外出や人との交流そのものが減っていくことがあります。社交不安症で専門外来に通う141人を調べた研究では、約5人に1人(19%)がひきこもりの状態でした[6]。ひきこもりのある人は、社交不安症の始まりが早く、症状も多い傾向がありました。

ただし、ひきこもりの背景は社交不安症だけではありません。うつ病や、ほかの不安症、発達の特性、環境の問題など、さまざまな要因が関わります。外出や人との交流を避ける状態が続いているときは、「性格の問題」と決めつけずに、心の不調が背景にないかを考えてみることも大切です。

社交不安症は、症状が長く続くことがあります

12年間にわたって社交不安症の経過を調べた研究では、社交不安症は、全般不安症やパニック症と比べても、回復する確率が最も低いことが報告されています[7]。そのため、長期的にみても症状が続きやすいと考えられています。

社交不安症を単に「人見知り」や「性格の問題」と考えて長く我慢するのではなく、不安や恐怖によって人との関わりを避けている、あるいは強い負担を抱えながら人と関わっている場合には、早めに相談することが大切です。

どうやって診断するの?

診断の基本は、医師による問診(詳しい聞き取り)です。次のようなことを確認します。

  • いつから、どんな場面で不安や恐怖を感じるようになったか
  • どんなことを避けているか
  • 学校や仕事、人間関係にどんな影響が出ているか

人前での緊張や不安は、ほかの精神疾患や身体の病気でもみられます。そのため、ほかの原因が関わっていないかも確認したうえで診断します。

自分の不安の程度をもう少し具体的に確認したい方は、LSAS(リーボウィッツ社交不安尺度)を参考にする方法もあります[9][10]。

「どのくらいの点数なら相談したほうがいいの?」「相談するタイミングは?」 と気になる方は、LSASの点数の見方についての記事も参考にしてください。

ただし、点数だけで相談の必要性や社交不安症の診断が決まるわけではありません。不安によって生活に支障が出ている場合は、点数にかかわらず相談を考えてみましょう。

→ 社交不安症のセルフチェック|LSASで症状の程度を確認する方法

社交不安症の治療(薬物療法とCBT)

治療には、薬物療法と心理療法(カウンセリング)があります[8][9]。

日本の診療ガイドラインやイギリスのNICE(英国国立医療技術評価機構)のガイドラインなどでは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法や、認知行動療法(CBT)などのカウンセリングが治療の選択肢として示されています[8][9]。

どの治療を選ぶかは、症状や本人の希望などを踏まえて、医師と相談しながら検討していきます。

→ 心療内科・精神科を受診すると、何をするの?

薬物療法

SSRIなどの抗うつ薬が使われることがあります[8][9]。効果だけでなく、副作用も含めて、医師とよく相談しながら決めていくことが大切です。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法は、社交不安症に対して用いられる心理療法の一つです[8][9]。「不安をなくすこと」だけが目標ではありません。不安が生じる場面で、次のようなことを一緒に整理していきます。

  • どんなことを考えているか
  • 自分にどんなふうに注意が向いているか
  • 不安を抑えるために、どんな行動をしているか
  • 不安を避けることで、何が起きているか

不安が続いてしまう悪循環を、本人と一緒に見つけていきます[11][12]。

→ 認知行動療法(CBT)ってどんなもの?

社交不安症の認知行動療法では何をするの?

社交不安症では、「人からどう見られているか」に注意が向きやすくなります。人と話しているときに、

「声が震えていないだろうか」
「変な顔をしていないだろうか」
「相手はつまらないと思っていないだろうか」

と、自分の反応を細かくチェックしてしまうのです。

不安を抑えるために、失敗や否定的な評価を避けようとする安全確保行動も増えていきます。

  • できるだけ話さない
  • 話す内容を事前に細かく考えておく
  • 相手の反応を何度も確認する
  • 目を合わせない

こうした行動は、その場を乗り切るためには役に立ちます。ところが、「この行動をしたから失敗せずにすんだ」と学習してしまい、行動をやめられなくなります。その結果、不安が続いたり、かえって強まったりします[11][12]。

そこでCBTでは、不安を無理に消そうとはしません。不安を強めている考え方や行動のパターンを整理し、実際の場面で試して確かめていきます。[9][11][12]

→ 社交不安症の認知行動療法(CBT)とは?不安が続く仕組みと具体的な取り組み

厚生労働省のウェブサイトでは、社交不安症に対する認知行動療法の進め方をまとめたマニュアルが公開されています。認知行動療法でどのようなことを行うのか、詳しく知りたい方は参考にしてください[13]。

→ 社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)|厚生労働省 PDF

不安をゼロにすることが目標ではない

社交不安症の認知行動療法は、「人前でまったく緊張しなくなること」を目標にするとは限りません。人と関わる以上、緊張や不安はあって当然だからです。

大切なのは、不安のせいで「やりたいことができない」「本当は関わりたい人と関われない」という状態から、少しずつ抜け出して、選べることを増やしていくことです。

「緊張していても、自分の伝えたいことを話せるようになりたい」
「不安があっても、人との関わりを増やしていきたい」

このように、自分が大切にしたいことを目標にします。

社交不安症が気になるとき

人前で緊張することは、誰にでもあります。でも、人との関わりに強い不安があり、そのために学校や仕事、人間関係で困っているなら、「気にしすぎだろう」と一人で片づけなくて大丈夫です。

「これくらいで相談していいのかな」と迷うときも、いま困っていることをそのまま話してみてください。医療機関にかかるべきか迷う場合は、まずカウンセリングで相談してみるのもよいでしょう。すでに通院している場合は、主治医に認知行動療法(CBT)について相談してみるのも一つの方法です。

社交不安症は長く続くことがありますが、薬物療法や認知行動療法(CBT)などの改善方法があります。不安をなくすことだけを目指すのではなく、不安があっても、自分が大切にしたい生活を少しずつ取り戻していくことを、一緒に考えていきましょう。

参考文献

  1. Kessler RC, Berglund P, Demler O, Jin R, Merikangas KR, Walters EE. Lifetime prevalence and age-of-onset distributions of DSM-IV disorders in the National Comorbidity Survey Replication. Arch Gen Psychiatry. 2005;62(6):593–602.
  2. Kessler RC, Chiu WT, Demler O, Merikangas KR, Walters EE. Prevalence, severity, and comorbidity of 12-month DSM-IV disorders in the National Comorbidity Survey Replication. Arch Gen Psychiatry. 2005;62(6):617–627.
  3. Wagner R, Silove D, Marnane C, Rouen D. Delays in referral of patients with social phobia, panic disorder and generalized anxiety disorder attending a specialist anxiety clinic. J Anxiety Disord. 2006;20(3):363–371.
  4. Zimmerman M, Chelminski I. Clinician recognition of anxiety disorders in depressed outpatients. J Psychiatr Res. 2003;37(4):325–333.
  5. Kessler RC, Stang P, Wittchen HU, Stein M, Walters EE. Lifetime co-morbidities between social phobia and mood disorders in the US National Comorbidity Survey. Psychol Med. 1999;29(3):555–567.
  6. Nagata T, Yamada H, Teo AR, et al. Comorbid social withdrawal (hikikomori) in outpatients with social anxiety disorder: clinical characteristics and treatment response in a case series. Int J Soc Psychiatry. 2013;59(1):73–78. doi:10.1177/0020764011423184.
  7. Bruce SE, Yonkers KA, Otto MW, et al. Influence of psychiatric comorbidity on recovery and recurrence in generalized anxiety disorder, social phobia, and panic disorder: a 12-year prospective study. Am J Psychiatry. 2005;162(6):1179–1187.
  8. Asakura S, Yoshinaga N, Yamada H, et al. Japanese Society of Anxiety and Related Disorders/Japanese Society of Neuropsychopharmacology: Clinical practice guideline for social anxiety disorder (2021). Neuropsychopharmacol Rep. 2023;43(3):288–309. doi:10.1002/npr2.12365.
  9. National Institute for Health and Care Excellence. Social anxiety disorder: recognition, assessment and treatment. Clinical Guideline CG159. 2013.
  10. Liebowitz MR. Social phobia. Mod Probl Pharmacopsychiatry. 1987;22:141–173.
  11. Clark DM, Wells A. A cognitive model of social phobia. In: Heimberg RG, Liebowitz MR, Hope DA, Scheier FR, eds. Social Phobia: Diagnosis, Assessment, and Treatment. New York: Guilford Press; 1995:69–93.
  12. Rapee RM, Heimberg RG. A cognitive-behavioral model of anxiety in social phobia. Behav Res Ther. 1997;35(8):741–756.
  13. 吉永尚紀(執筆・編集),清水栄司(監修).社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用).第3版.2016年.厚生労働科学研究班の研究事業により作成.
  14. 朝倉聡.社交不安症の診断と評価.不安症研究. 2015;7(1):4–17. https://doi.org/10.14389/jsad.7.1_4
  15. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. 5th ed, Text Revision (DSM-5-TR). Washington, DC: American Psychiatric Association Publishing; 2022.

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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