「どうして自分はうつ病になったのだろう?」
「仕事のストレスが原因なのかな?」
「自分の性格や体質が関係しているのだろうか?」
うつ病になると、このように「何が原因だったのか」と考えることがあります。
しかし、うつ病の原因を一つに決めることはできません。
仕事や人間関係などの環境要因だけでなく、遺伝的な要因や性格傾向、これまでの生活歴など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
こうした複数の要因の関係を考えるモデルの一つに、ストレス脆弱モデルがあります。

ストレス脆弱モデルでは、もともとの個人差と、生活の中で経験するストレスとの組み合わせによって心身への負担が大きくなり、うつ病などの精神的な不調につながることがあると考えます。
この記事では、ストレス脆弱モデルをもとに、うつ病に関係する代表的な要因について紹介します。
この記事のポイント
- うつ病には、環境要因と個人側の要因など、さまざまな要因が関係しています
- 仕事や人間関係などのストレスが影響し、ストレスの受け方も個人差があります
- 遺伝・性格・生活歴・発達特性なども関係することがあります
環境要因と個人側の要因
環境要因と個人側の要因は、それぞれが単独でうつ病を引き起こすというよりも、さまざまな要因が重なり合いながら、うつ病の発症に影響すると考えられています。
環境要因(外からかかるストレス)
- 仕事の量、忙しさ、責任
- 人間関係やハラスメント
- 家族関係
- 病気や経済的な問題
- 大切な人との死別
- 引っ越し、転職、出産などの生活上の変化
個人側の要因
- 遺伝的な要因や体質
- 性格傾向
- これまでの成育歴や生活歴
- 小児期の逆境体験
- 発達特性など、本人の特徴
環境要因
うつ病の発症には、生活の中で経験するさまざまなストレスが関係することがあります。
例えば、仕事の負担、人間関係の問題、家族との関係、病気、経済的な問題、死別など、ストレスとなる出来事はさまざまです。
また、大きな出来事が一つ起こったことをきっかけに調子を崩す人もいれば、小さなストレスがいくつも重なって負担が大きくなる人もいます。
さらに、同じ出来事を経験しても、人によって受ける影響は異なります。
働く人のストレスについて詳しく知りたい方はこちら(作成中)
個人側の要因
遺伝的な要因
うつ病には、遺伝的な要因も関係すると考えられています。
家族にうつ病を経験した人がいる場合、本人も発症する可能性が高くなることが知られています。
ただし、遺伝的な要因があるからといって、必ずうつ病になるわけではありません。うつ病は、遺伝的な要因だけで決まるものではなく、環境やこれまでの経験など、さまざまな要因が関係しています。
性格傾向
性格傾向も、うつ病との関連が研究されています。
性格を捉える方法の一つに、ビッグファイブがあります。ビッグファイブの性格特性の一つである「神経症傾向」は、ストレスなどによって不安や落ち込みなどの感情が生じやすい傾向を表します。
神経症傾向が高いことは、うつ病などの精神的な不調との関連が報告されています。ただし、これも「神経症傾向が高いからうつ病になる」という単純な関係ではありません。
性格はうつ病の原因を一つに決めるものではなく、環境やストレスなどとの組み合わせの中で考える必要があります。
これまでの生活歴
これまでどのような環境で生活してきたのかということも、こころの健康に影響することがあります。
例えば、小児期の逆境体験(ACEs:Adverse Childhood Experiences)には、虐待やネグレクト、家庭内暴力の目撃などが含まれます。小児期の逆境体験は、その後の精神的・身体的な健康との関連が報告されています。
小児期逆境体験について詳しく知りたい方はこちら(作成中)
発達特性と環境とのミスマッチ
発達特性があること自体が、うつ病の原因になるわけではありません。
しかし、本人の特性と生活環境が合わず、仕事や学校、人間関係などで強い負担が続くことで、こころの不調につながることがあります。
そのため、うつ病について考えるときには、症状だけでなく、本人がどのような環境で生活し、どのようなことで困っているのかを理解することも大切です。
周産期・産後の変化
出産前後は、生活環境や家族関係、睡眠、役割などが大きく変化する時期です。
産後うつは母親だけに起こるものではなく、父親にもみられます。
周産期・子育て期における父親の抑うつには、本人の精神的な健康状態、パートナーの抑うつ、夫婦関係、経済的な問題など、さまざまな要因が関連しています。
更年期など身体的な変化
ホルモンの変化など、身体的な変化が気分や体調に影響することもあります。
また、甲状腺の病気など、身体的な病気によって、うつ病と似た症状がみられることもあります。
そのため、気分の落ち込みや疲れやすさなどが続いている場合には、こころの問題だけでなく、身体的な状態について確認することも大切です。
うつ病の原因は一つではありません
ここまで見てきたように、うつ病に関係する要因は、仕事や家庭、人間関係などの環境だけではありません。また、遺伝や体質だけで決まるといった単純なものでもありません。
大きなストレスをきっかけに調子を崩す人もいれば、複数の小さなストレスが積み重なって負担が大きくなる人もいます。
また、自分にとって特に負担の大きい環境に長く置かれることで、こころの不調につながる人もいます。
一方で、同じようなストレスを経験しても、すべての人がうつ病になるわけではありません。これは、その人が持っている特徴やこれまでの経験、現在の生活環境などが一人ひとり異なるためです。
そのため、うつ病について考えるときには、「何が原因だったのか」を一つに決めるのではなく、その人がどのような環境で生活し、どのような特徴や生活歴があり、現在どのような負担を抱えているのかを全体として理解することが大切になります。
また、不安症とうつ病は併存することがあり、両者には双方向の関連が報告されています。不安症について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
うつ病には、環境やこれまでの経験、個人の特徴など、さまざまな要因が関係するため、薬物療法だけでは十分に対応しきれないこともあります。そのため、現在の生活でどのような負担があるのかを整理したり、考え方や行動のパターンを見直したりするなど、必要に応じてさまざまな方法を組み合わせていくことがあります。
認知行動療法(CBT)では、現在の生活環境やストレス、これまでの経験、考え方や行動などを丁寧に整理しながら、現在の問題をどのように理解し、どのように変えていくかを一緒に考えていきます。
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参考文献
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- 日本うつ病学会.うつ病診療ガイドライン2025.
- Jacobson NC, Newman MG. Anxiety and depression as bidirectional risk factors for one another: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin. 2017;143(11):1155–1200.
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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