認知行動療法で改善が期待できる症状とは?CBTが効果を発揮する疾患を解説

認知行動療法の適用図

認知行動療法(CBT)は、世界中で研究が行われている心理療法(カウンセリング)の一つです

うつ病や不安症など、さまざまな精神疾患に対して効果が認められており、多くの国の診療ガイドラインでも推奨されています。また、仕事や人間関係などのストレスへの対処や、一部の身体症状にも活用されています。

認知行動療法では、問題への対処方法を身につけ、日常生活の中で実践していくことを大切にします。こうした方法を身につけることは、症状の改善だけでなく、再発防止や、日常生活で生じるストレスへの対処にも役立ちます。

ここでは、認知行動療法がどのような症状や疾患に用いられ、どのような効果が期待されているのかを紹介します。

認知行動療法が効果を発揮しやすい疾患

うつ病

認知行動療法は、うつ病に対して最も研究が進んでいるカウンセリングの一つです。例えば、

  • 気分の落ち込み
  • やる気が出ない
  • 自分を責めてしまう
  • 外出や活動が減ってしまう

といった悪循環を整理し、少しずつ生活を立て直していきます。また、症状が改善した後の再発予防にも役立つことが分かっています。

厚生労働省の資料では、うつ病に対する認知行動療法について、16~20回程度の面接を行う方法が紹介されています。実際の回数は、症状や目標などによって異なるため、一つの目安として考えていただければと思います。

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参考資料

不安症

認知行動療法は、さまざまな不安症に効果が確認されています。

例えば、

  • パニック症
  • 社交不安症(人前で強い不安を感じる)
  • 全般不安症(さまざまなことを過度に心配してしまう)

などです。不安を完全になくすことではなく、「不安があっても、自分らしい生活を送れるようになること」を目標に練習していきます。

国内でも研究や実践が進んでおり、パニック症や社交不安症については、厚生労働省が認知行動療法の治療者用マニュアルを公開しています。

認知行動療法は、1回で終わるものではなく、12~16回程度と、ある程度まとまった回数で取り組むことがあります。ただし、必要な回数は症状や目標、取り組み方などによって異なります。

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強迫症(OCD)

強迫症では、

  • 何度も確認してしまう
  • 手洗いをやめられない
  • 不安な考えが頭から離れない

といった症状がみられます。このような症状には、曝露反応妨害法(ERP)という認知行動療法の技法が、有効な方法の1つとして推奨されています。

厚生労働省の認知行動療法マニュアルでは、ERPを中心とした認知行動療法について、16回のセッションを基本とした構成が示されています。ただし、実際の治療回数は、症状の程度や治療の進み具合などによって異なります。

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PTSD(心的外傷後ストレス障害)

事故や災害、虐待、DVなどのつらい体験のあと、

  • 思い出したくないのに思い出す
  • 強い警戒心が続く
  • 関連する場所や出来事を避ける

といった症状がみられることがあります。トラウマ体験後に生じる心身の反応は、多くの場合、時間とともに自然に回復していきます。しかし、PTSDでは、トラウマ体験後に生じた考え方や感情、行動などに、回復を妨げている要因が残っていることがあります。

認知行動療法では、トラウマ体験をどのように捉えているのか、そこからどのような感情や行動が生じているのかを整理しながら、自然な回復を妨げているものを少しずつ整理し、回復を目指していきます。

PTSDに対する認知行動療法の一つに、認知処理療法(CPT)があります。認知処理療法では、トラウマ体験後に生じた考え方や信念に焦点を当て、それらを整理しながらPTSD症状や日常生活への影響の改善を目指します。認知処理療法は全12回のセッションを基本構成としていますが、実際の回数は一人ひとりの状況や状態によって異なります。

不眠症

不眠症では、

  • 寝つきが悪くなる
  • 夜中に目が覚めてしまう
  • よく眠った感じがしない

といった問題が続き、日中の生活に支障をきたしたり、うつ病などの症状に影響したりすることがあります。不眠症では、薬物療法だけでなく、認知行動療法(CBT-I)も有効とされています。睡眠のリズムや生活習慣、眠れないことへの対処などを見直し、睡眠の改善を目指します。

慢性的なストレスや適応症

仕事や家庭、人間関係などのストレスによって、

  • 気分が落ち込む
  • 不安になる
  • イライラする
  • 集中できない

といった状態にも認知行動療法は役立ちます。問題を整理し、ストレスとの付き合い方や対処方法を一緒に考えていきます。

身体の病気によるつらさ

認知行動療法は精神疾患だけでなく、身体の病気による困りごとにも活用されています。例えば、

  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 慢性的な痛み

などです。病気そのものを治す方法ではありませんが、症状とうまく付き合いながら生活の質(QOL)を高めることを目標に行われます。

子どもや思春期の問題

認知行動療法は大人だけでなく、子どもや思春期の問題にも有効とされています。

例えば、

  • 不安症
  • 強迫症
  • うつ症状
  • 学校への不安
  • ASDやADHDに伴う不安や感情のコントロール

などに活用されています。ASDやADHDそのものを治すことを目的とするものではありませんが、不安への対処や気持ちの整理に加え、時間管理や問題解決など、一人ひとりの困りごとに応じたスキルを身につけるために取り入れられることがあります。

認知行動療法だけで治るの?

認知行動療法(CBT)は、さまざまな心の問題や精神疾患に対して効果が期待されている治療法の一つです。ただし、すべての人に同じような効果が得られるわけではなく、症状の程度や生活状況などによって、必要な支援は異なります。

症状が強い場合には、

  • 薬物療法
  • 認知行動療法
  • 十分な休養
  • 生活や職場などの環境調整

などを組み合わせながら回復を目指したり、症状が落ち着いてから認知行動療法を開始する場合もあります。

薬物療法と認知行動療法は、それぞれ異なる特徴や役割があります。どちらか一方だけを選ぶのではなく、専門家に相談しながら、その人の状態や希望に応じて選択してくことが大切です。

薬物療法と認知行動療法の違いについては以下の記事で解説しています。

関連記事:薬と認知行動療法(CBT)は何が違う?

まとめ

認知行動療法(CBT)は、多くの研究によって効果が確認されている心理療法です。特に次のような症状や疾患で活用されています。

  • うつ病
  • パニック症
  • 社交不安症
  • 全般不安症
  • 強迫症(OCD)
  • PTSD
  • 不眠症
  • 適応障害やストレス関連の悩み
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 慢性的な痛み(慢性疼痛)

ここでは紹介しきれませんが、認知行動療法は他にもさまざまな領域で活用されています。
例えば、摂食障害、パーソナリティ障害、怒りのコントロール、人間関係の困りごとなどにも、疾患や状態に応じた心理療法として用いられています。

認知行動療法の目的は、「前向きに考えられるようになること」ではありません。現在の困りごとを整理し、自分に合った対処法を身につけながら、生活を送りやすくしていくことを目指します。

「今のつらさを何とかしたい」「同じような悩みを繰り返したくない」と感じている方は、認知行動療法を一つの選択肢として検討してみてもよいかもしれません。すでに医療機関に通院している方は、主治医に認知行動療法について相談してみることも一つの方法です。

認知行動療法について、知りたい方はこちらをご覧ください。

次の記事:認知行動療法(CBT)ってどんなもの?

なお、カウンセリングを利用するかどうか迷っている方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:カウンセリングが向いている人とは?利用を考え始めたときに知っておきたいこと

参考文献

  1. Society of Clinical Psychology. (n.d.). Psychological Treatments. American Psychological Association, Division 12.
    https://societyofclinicalpsychology.org/resources/psychological-treatments/
  2. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). (2022). Depression in adults: treatment and management (NG222).
    https://www.nice.org.uk/guidance/ng222
  3. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). (2011, updated 2020). Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management (CG113).
    https://www.nice.org.uk/guidance/cg113
  4. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). (2005). Obsessive-compulsive disorder and body dysmorphic disorder: treatment (CG31).
    https://www.nice.org.uk/guidance/cg31
  5. National Institute for Health and Care Excellence (NICE). (2018). Post-traumatic stress disorder (NG116).
    https://www.nice.org.uk/guidance/ng116
  6. 厚生労働省.「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」
  7. 厚生労働省.「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」
  8. 厚生労働省.「パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル」
  9. 厚生労働省.「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル」

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
詳細なプロフィールはこちらをご覧ください。