カウンセリングが向いている人とは?利用を考え始めたときに知っておきたいこと

「自分の悩みはカウンセリングを受けるほどではないかもしれない」
「自分はカウンセリングに向いているのだろうか」
このような不安から、相談するか迷っている方は少なくありません。実際には、カウンセリングを受けるために特別な性格や条件があるわけではありません。
一方で、カウンセリングが力を発揮しやすいタイミングもあれば、まずは医療による治療や身体の回復を優先した方がよい場合もあります。ここでは、カウンセリングが向いている方や、利用を始めるタイミングについてお話しします。

カウンセリングで相談できる悩み

カウンセリングは、メンタル症状がある人だけが受けるものではありません。例えば、

  • 気持ちやストレスを整理したい
  • 仕事で強いストレスを感じている
  • 人間関係で悩んでいる
  • 家事や育児に疲れている
  • 子どもの不登校について相談したい
  • 家族との関係に悩んでいる
  • 将来について考えがまとまらない

このような悩みに対しても利用されています。また、うつ病、不安症、強迫症、PTSD、摂食障害など、さまざまなメンタルヘルスの問題に対しては、認知行動療法(CBT)が用いられています。
詳しくは、各疾患についての記事もご覧ください。

「何とかしたい」という気持ちがあれば十分

カウンセリングでは、カウンセラーが代わりに問題を解決したり、人生の選択を決めたりすることはできません。一緒に状況を整理し、考えながら、自分に合った方法を見つけていく時間になります。そのため、「問題と向き合ってみようかな」「何とかしたいな」という気持ちが少しでもあると、カウンセリングは進めやすくなります。
もちろん、最初から強い意欲がある必要はありません。悩みや疲れが続いている方ほど、「何もやる気が出ない」「考えること自体がつらい」ということも珍しくありません。それでも、「このままでは少し苦しいな」と感じて相談に来られる方はたくさんいます。
一方で、医療機関やご家族から勧められ、「本当は受けたくないけれど断れなくて来た」という方もいます。無理に始めても、十分な効果が得られないことがあります。慌てず、ご自身の中で「少し話してみようかな」と思えるタイミングを待つことも大切です。

カウンセリングよりも医療を優先した方がよい場合① 死にたい気持ちが切迫している

強いストレスやこころの不調が続くと、「消えてしまいたい」「死にたい」と感じることがあります。このような気持ちは、決して珍しいものではありません。そして、その背景には強い苦しさや追い詰められた状況があることがほとんどです。カウンセリングは、その苦しさの背景を理解し、回復を目指していくうえで役立つ方法の一つです。ただし、今すぐ命の危険があるほど切迫している場合には、安全を確保することが何よりも優先されます。このような場合は、まず医療機関を受診したり、必要に応じて入院など安全な環境で治療を受けることが大切です。こころの状態が少し落ち着いてからカウンセリングを始めても、決して遅くはありません。

カウンセリングよりも医療を優先した方がよい場合② 症状が非常に重い時期

例えば重いうつ病では、

  • ほとんど起き上がれない
  • 考えがまとまらない
  • 会話をすること自体がとても苦しい

という状態になることがあります。他のメンタル症状でも、急性期にはまず症状を落ち着かせる治療が優先されます。症状が非常に重い場合には、薬物療法などでつらい症状を和らげ、ある程度落ち着いて考えられるようになってから、認知行動療法を組み合わせるようにしましょう。

カウンセリングよりも医療を優先した方がよい場合③ 摂食障害で身体の状態が非常に悪い場合

摂食障害では、「食べられない」「食べても吐いてしまう」といった食行動のコントロールが難しくなることがあります。認知行動療法は摂食障害にも有効な治療法の一つですが、低栄養の状態(例えばBMIが15未満)では、まず身体の安全を確保することが優先されます。低栄養の状態では集中力や判断力が低下し、認知行動療法に取り組むことが難しくなることも知られています。このような場合には、まず医療機関で身体の状態を整え、その後にカウンセリングが勧められます。焦らず、体の回復を優先することが、結果的にはカウンセリングの効果にもつながります。

カウンセラーは相談者のことをどう思っているの?

日本では、カウンセリングを利用した経験がある方はまだ多くありません。そのため、「こんなことを相談してもいいのかな」「こんな話をしたら変に思われないかな」と不安になる方も多いように感じます。
私自身、認知行動療法(CBT)を専門に学ぶコミュニティーに所属していますが、そこでは、自分から興味を持って学び続けている人が多くいます。そのため、「相談に来ていただけること」を前向きに受け止めているカウンセラーが多いと思います。
一方で、「役に立ちたい」という気持ちも強いため、先ほどお話ししたように、症状が非常に重い時期や身体の安全が優先される状態では、十分なお手伝いができず、もどかしさを感じることもあります。そのため、医療とカウンセリングを適切なタイミングで組み合わせることが大切だと考えています。

最後に、カウンセリング全般に共通することですが、カウンセリングは、「何でも話してよい場所」です。そのため、話した内容が正当な理由なく外部に伝えられることはありませんし、どのような悩みを話したからといって、カウンセラーが相談者を悪く評価したり、人として価値を判断したりすることもありません。安全に話せる場所であることを大切にしています。
一人で抱え続けることが苦しくなったときには、「少し話をしてみようかな」という気持ちだけでも十分です。その一歩が、これからの生活を少し楽にするきっかけにつながります。

まとめ

カウンセリングに向いている人とは、「特別な人」ではありません。仕事や人間関係、家族のこと、自分自身のことなど、何かに悩み、「少しでも今の状況を変えたい」と感じている方であれば、カウンセリングは選択肢の一つになります。
一方で、命の危険が差し迫っている場合や、心や体の状態が非常に不安定な場合には、まず医療による治療を優先した方がよいこともあります。
回復してからカウンセリングを始めても遅くはありません。大切なのは、「今の自分に合った支援を受けること」です。一人で抱え込まず、必要なときには周囲の力を借りながら、一歩ずつ回復を目指していきましょう。
カウンセリングを受けるかどうかを考えるとき、「薬による治療とカウンセリングは、どのように違うのだろう?」と疑問に思う方もいるかもしれません。次の記事では、それぞれどのような特徴を持ち、どのように使い分けられるのかについて解説します。
次の記事薬と認知行動療法(CBT)は何が違うの?

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
詳細なプロフィールはこちらをご覧ください。