「発作が起きたら、どうすればいいのだろう」
「また発作が起きるのが怖くて、外出するのが不安」
「頭では大丈夫だとわかっていても、身体の症状が出ると怖くなる」
パニック発作を経験すると、発作そのもののつらさだけでなく、「また起きたらどうしよう」という不安が続くことがあります。電車や人混みを避けたり、一人で外出することが難しくなったりする方もいます。
こうした不安に対処するには、パニック発作が起きたときの過ごし方を知るだけでなく、発作への恐怖が続く仕組みを理解することも大切です。
この記事では、パニック発作が起きたときの対処法、発作への不安との向き合い方、認知行動療法(CBT)で行われる取り組みについて解説します。
この記事の3つのポイント
- パニック発作が起きたときの対処法
- 発作への恐怖や予期不安が続く仕組みの理解
- 認知行動療法でパニック障害を改善する方法
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パニック発作が起きたときの対処法
パニック発作では、動悸や息苦しさ、めまいなどの身体症状とともに、強い恐怖を感じることがあります。発作の最中は、まず安全を確保し、無理をせずに過ごすことを考えましょう。
英国の国民保健サービス(NHS)でも、パニック発作への対処として、可能であればその場にとどまること、ゆっくり呼吸すること、発作はいずれ落ち着くと思い出すこと、穏やかなイメージに意識を向けることなどが紹介されています[1]。
外出中に発作が起きた場合は、必要に応じて安全な場所に移動し、座れる場所があれば腰を下ろしても構いません。
呼吸をゆっくり整える方法もありますが、呼吸に意識を向けることで、かえって息苦しさが強くなる方もいます。そのような場合は、無理に呼吸をコントロールしようとせず、周囲の環境に注意を向けてみるのも一つの方法です。
そのほか、注意を周囲に向ける方法として、次のようなものがあります。
- 目に入る景色を眺める
- 周囲の音を聞く
- 手で触れているものの感触を確かめる
- 好きな香りを嗅ぐ
- 近くの人と会話する
身体の症状や不安だけに向いていた注意を、外の環境にも広げてみましょう。
ただし、これらは発作をやり過ごすための工夫であり、パニック障害そのものの改善効果が確かめられているわけではありません。
また、初めて経験する症状や、いつもと異なる強い胸痛、強い息苦しさなどがある場合は、パニック発作と決めつけず、医療機関に相談してください。症状が突然強く現れ、緊急性が疑われる場合は、救急車を呼ぶことも検討してください。
こうした対処をしても、「また発作が来たらどうしよう」という不安は続くことがあります。ここからは、パニック障害の改善に向けた取り組みについて解説していきます。
予期不安とは? パニック発作への恐怖が続くのはなぜ
パニック発作を経験すると、「また発作が起きたらどうしよう」「外出先で具合が悪くなったら困る」と考え、発作が起きていないときにも不安が続くことがあります。
このように、次の発作が起きることを心配したり、発作が起きることを恐れたりする状態を、予期不安といいます。
ここでは、予期不安がどのように維持されるのか、認知行動療法の考え方から整理します[3]。
身体の感覚を危険なものとして受け止める
動悸や息苦しさを「心臓発作かもしれない」「倒れるかもしれない」と危険なものとして受け止めると、不安が強まります。不安が強まると身体の感覚もさらに強く感じられ、ますます危険だと思ってしまいます。こうして、身体の変化と不安が互いに影響し合う悪循環が生まれます。
身体の変化に注意が向き続ける(自己注目)
発作が怖くなると、動悸や息苦しさが起きていないか、何度も確認するようになることがあります。
- 呼吸が苦しくなっていないか確認する
- 脈拍や血圧を何度も確認する
- 身体の小さな変化を見逃さないようにする
このように、自分の身体の状態に注意が向き続けることを「自己注目」と呼びます。警戒するほど小さな変化にも気づきやすくなり、「また発作が起きるのではないか」と不安が強まることがあります。
安心するための行動が、不安を維持することがある(安全確保行動)
発作が怖いと、少しでも安心して過ごすために、さまざまな工夫をします。
- すぐに降りられるよう、ドアの近くに立つ
- 誰かと一緒でないと出かけられない
- 逃げ道を常に確認する
こうした行動の中には、必要な安全対策として役立つものもあります。ただし、不安を感じないことを最優先にして対処を増やし続けると、「出口の近くにいたから大丈夫だった」「その行動をしなければ危険だ」という認識につながり、不安や回避が維持されることがあります。こうした行動を「安全確保行動」と呼びます。
こうした維持要因を、すぐに変えようとする必要はありません。大切なのは、自分が何を恐れ、どのような対処をしていて、それが生活にどう影響しているかを理解することです。人によってパターンは異なるため、まずは自分のパターンを知ることから始めましょう。
自分の不安のパターンを整理する
発作への恐怖に対処するためには、自分がどのような状況で不安を感じ、何を恐れ、どのような行動を取っているのかを整理することが役立ちます。最近不安が強くなった場面について、次の点を振り返ってみましょう。
| 振り返ること | 具体例 |
|---|---|
| 不安が強くなる状況 | 電車に乗る、人混みに入る、一人で外出する |
| 身体の変化 | 動悸、息苦しさ、めまい、汗をかく |
| そのときの考え | 倒れるかもしれない、逃げられないかもしれない |
| 注意の向き方 | 心臓の動きや呼吸を繰り返し確認する |
| 不安を減らすための行動 | すぐに降りる、外出を避ける、誰かに付き添ってもらう |
| その後の変化 | 一時的に安心するが、次も同じ状況を恐れる |
すべてを詳しく記録する必要はありません。まずは、「何が起きたか」「何を考えたか」「どのような行動を取ったか」を整理するだけでも構いません。
この振り返りは、自分の行動の良し悪しを判断するためのものではありません。不安が強まる流れを理解し、どこに働きかけるとよさそうかを考えるための手がかりです。
また、睡眠不足や疲労、仕事や家庭でのストレスなどが、不安の感じ方に影響していることもあります。発作だけに注目するのではなく、その時期の生活状況も含めて振り返ると、自分の状態を理解しやすくなります。
こうした悪循環は、「発作が起きたら本当に恐れていることが起きるのか」を、実際に確かめていくことで変わっていきます。その具体的な方法が、次の認知行動療法です。
パニック障害をどう改善するか|認知行動療法
パニック障害の認知行動療法では、パニック障害についての理解(心理教育)、恐れている予測の見直し、そして曝露(エクスポージャー)が中心的な取り組みになります。
パニック障害に対する認知行動療法は、英国のNICE(国立医療技術評価機構)の診療ガイドラインでも推奨されています[2]。
身体感覚への曝露
パニック発作につながると恐れている身体の感覚に、段階的に向き合い、その感覚や自分の予測を確かめていく方法です。
例えば、動悸を感じると「心臓に重大な問題が起きるのではないか」と不安が高まる方がいます。こうした場合に、何を恐れているのか、その感覚が起きたときに何が起こると予測しているのかを整理したうえで、運動など動悸を生じる活動を行い、実際に動悸が生じたときに何が起きるのかを振り返ります。
※身体感覚への曝露は、身体の状態や持病などを確認したうえで、適切に行う必要があります。身体症状について医療機関で評価を受けていない場合や、持病がある場合は、事前に医師に相談してください。また、自己流で無理に行わず、認知行動療法に詳しい専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
状況への曝露
電車や人混みなど、恐怖や不安を感じる状況に段階的に取り組み、何が起こると予測しているのか、実際には何が起こるのかを確かめていく方法です。
電車が怖くなり、外出を避けるようになった場合には、まず何が怖いのかを具体的に整理します。
- 電車の中で発作が起きることが怖い
- 発作が起きても、すぐに降りられないことが怖い
- 周囲の人に迷惑をかけたり、倒れたりすることが怖い
同じ「電車が怖い」でも、恐れていることは人によって異なります。そこで、不安を感じる場面を不安の強さに応じて並べた「不安階層表」を作り、取り組む場面や順序を検討します。
単に不安の強い場面を避けることや、いきなり最も怖い場面に挑戦することが目的ではありません。本人の状態や目標に合わせて段階を設定し、取り組んだ結果を振り返りながら進めます。
安全確保行動との付き合い方
曝露に取り組む際には、安全確保行動についても考えます。出口の近くに立つ、身体の状態を何度も確認する、呼吸法を続けるといった行動で一時的に安心できても、「その対処があったから大丈夫だった」と感じると、恐れている予測が確かめられず、不安が改善しにくいことがあります。
そのため、どのような安全確保行動を行っているかを確認し、必要に応じて少しずつ調整していきます。すべてを一度にやめる必要はありません。必要な安全対策と、不安を維持している可能性のある行動を区別しながら、取り組み方を検討します。
注意の向け方を見直す
パニック発作への不安が強いと、心臓の動きや呼吸など、身体の状態ばかりに注意が向くことがあります。身体の変化を繰り返し確認すると、小さな変化にも気づきやすくなり、それをきっかけに不安が強まることがあります。
このようなときには、身体の状態を確認することだけに注意を集中させず、周囲の景色や音、目の前で行っていることにも注意を向けてみます。
このように注意を向ける練習は、不安を消すためのものではなく、身体の確認に偏った注意を広げることが目的です。不安なときに注意を切り替えることは難しいこともあるため、自分の状態に合わせて少しずつ試していくことが大切です。
改善がうまく進まないとき
実際にパニック障害の認知行動療法を行うなかで、次のような声を聞くことがあります。
- 「頭では危険ではないとわかっている」
- 「曝露は怖くてできない」
- 「自分でやってみたけれど、効果を感じられなかった」
パニック発作について調べ、改善のために自分で取り組んでいることは、大切な一歩です。ただ、知識として理解することと、実際に不安を感じる場面で行動を変えることは、必ずしも同じではありません。
曝露が怖くて取り組めない場合には、何を恐れているのか、どの程度の負担を感じているのか、取り組む目標や段階が本人の状態に合っているかを整理する必要があります。段階が大きすぎる場合は、小さな場面から取り組み直すことで、進めやすくなることがあります。
自分で取り組んでも効果を感じられなかった場合は、安全確保行動が残っていたり、段階が合っていなかったりすることもあります。それは本人の努力不足ではありません。
まとめ
パニック発作が起きたときは、まず安全を確保し、無理をせずに過ごすことが大切です。呼吸をゆっくり整えたり、五感を使って周囲に注意を向けたりする方法もあります。
また、パニック症では、発作そのものへの恐怖に加え、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安や、発作を避けるための行動によって、日常生活が制限されることがあります。
認知行動療法では、不安や身体症状が続く仕組みを整理し、自分に合った対処法を身につけながら、避けている状況などに段階的に取り組んでいきます。
発作時の対処を試してもうまくいかない場合や、予期不安や回避によって生活に支障が出ている場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談することも選択肢の一つです。
パニック発作への不安が続いていても、不安との付き合い方を学び、少しずつ行動の幅を広げていくことはできます。行きたい場所に行き、やりたいことができる生活を目指して、自分に合った方法を探していきましょう。
参考文献
[1]NHS. Panic disorder.
https://www.nhs.uk/mental-health/conditions/panic-disorder/
[2]National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management.
https://www.nice.org.uk/guidance/cg113/chapter/Recommendations
[3]関陽一,清水栄司.パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル.不安症研究.2016;7(Special_issue):94–154.
https://doi.org/10.14389/jsad.7.Special_issue_94
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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