「何か悪いことが起きたらどうしよう」
「うまくいかなかったらどうしよう」
そんな不安や心配事に、こころを奪われていないでしょうか?
誰でも不安になることがありますが、不安や心配が長く続き、コントロールすることが難しくなったり、日常生活に影響が出たりする場合は、全般性不安症(GAD)の可能性があります。
今回は、全般性不安症で生じる不安や心配の悪循環と、その対処法について、認知行動療法(CBT)の視点から解説します。
全般性不安症の症状や特徴については、前の記事で解説しています。
この記事のポイント
- 心配することが役立つと考えると、悪循環につながることがある
- 認知行動療法では、悪循環を見直し、現実的な問題解決と心配しすぎを区別する
- 過剰な準備や確認を少しずつ減らし、心配に振り回されずに生活することを目指す
心配が止まらなくなるのはなぜ?
心配が役に立つ場合
不安や心配は、必ずしも悪いものではありません。
例えば、大きな仕事を任されたとします。「うまくできるだろうか」と不安になり、起こりそうな問題を考えて、必要な準備や対策をする。
そして、無事に仕事を終えることができた。このような経験をすると、
「心配したから、きちんと準備できた」
「いろいろ考えておいたから、問題なく終えることができた」
と感じるかもしれません。実際、不安や心配がきっかけとなって、必要な準備や問題解決につながることもあります。
心配が止まらなくなる場合
一方で、心配することが役に立ったという経験が積み重なると、かえって心配が止まらなくなることがあります。例えば、慣れていない仕事をするときに、
「失敗したらどうしよう」
「何か問題が起きるかもしれない」
と心配になり、何度もシミュレーションしたり、さまざまな対策を考えたりします。そして、実際には何も問題が起こらなかった。すると、「やっぱり、心配して準備しておいてよかった」と感じるかもしれません。
しかし、実際には、それほど念入りに準備しなくても問題は起こらなかったかもしれません。それでも、「心配して準備したから問題を防げた」と考えることで、心配することの必要性をますます強く感じるようになります。
すると、実際に問題が起きそうなときだけでなく、自宅で休んでいるときや寝る前にも、
「これについても考えておいた方がいい」
「もし何か起きたら大変だ」
と、次々に心配するようになります。さらに、「備えておかないと大変なことになる」という考えも強くなり、さまざまな場面で不安を感じやすくなります。
こうして心配が長く続くと、こころだけでなく身体も休まりにくくなり、気分の落ち込みなどにつながることもあります。

全般性不安症への認知行動療法
認知行動療法では、こうした悪循環を整理し、不安や心配が続く原因となっている考え方や行動を少しずつ見直していきます。
不安を強める考え方を見直す
不安が強まる背景には、危険を実際よりも大きく感じる「脅威の過大評価」と、自分の対処能力を低く見積もる「対処能力の過小評価」が関係していることがあります。
例えば、仕事で失敗することを心配している場合、
「少しでもミスをしたら、大変なことになる」
「失敗したら、自分ではどうすることもできない」
と問題を大きく捉えすぎているかもしれません。そこで、次のような点を振り返ります。
脅威の過大評価
- 実際よりも危険を大きく捉えていないか
- 問題が起こる確率を高く見積もっていないか
- 安全な側面や、うまくいく可能性を見落としていないか
対処能力の過小評価
- 自分で対処できる力を低く見積もっていないか
- 過去に問題を乗り越えた経験を見落としていないか
- 周囲からの協力やサポートを小さく見積もっていないか
不安を感じること自体が間違っているわけではありません。
「実際にはどのくらい危険なのか」「もし問題が起きたら、どのような対処ができるのか」といった点を振り返り、状況を現実的に捉え直していきます。
「心配は役立つ」という考え方を見直す
全般性不安症では、「心配することには意味がある」という考えが、心配を続けることに関係している場合があります。
例えば、
- 「心配しておけば、問題に対処できる」
- 「心配していれば、危険を避けられる」
- 「心配しておけば、突然悪いことが起きても驚かない」
といった考えです。こうした考えがあると、気になることが出てくるたびに、「もっと考えておかなければ」と心配を続けるようになります。
そこで、心配することのメリットだけでなく、
「心配を続けることで、どんな負担が生じているだろう」
「今、このことを考え続けることは本当に役立っているだろうか」
と振り返ってみます。そのうえで、「今は」心配する必要がないと判断できたら、目の前の作業や会話、趣味や休息などに注意を切り替え、心配事から少しずつ離れていきます。
現実的な問題解決と心配しすぎを区別する
不安を感じると、「もし失敗したらどうしよう」「何か問題が起きたらどうしよう」と、次々に心配が広がり、考え続けてしまうことがあります。そのときは、現実的な問題解決と、心配しすぎているときの考え方を区別してみましょう。
現実的な問題解決
- 実際に起きている問題に目を向ける
- 自分で対処できることを考える
- 自分の強みや利用できる支援を生かす
- できることを試し、結果を見て改善する
心配しすぎているとき
- 「もし〇〇だったら」と、まだ起きていないことを考え続ける
- 自分ではコントロールできないことまで考える
- 自分にできないことばかりに目が向く
心配しすぎていることに気づいたら、まずは「今、不安になっているんだな」と理解し、具体的に対処できる問題と、今は対処できない心配事を分けてみます。頭の中で考えるだけではなく、書き出して整理することも役立ちます。
過剰な準備や対策を減らす
心配して準備した結果、何も問題が起こらなかったとすると、「準備したから大丈夫だった」と感じ、次も同じように準備や確認をしたくなることがあります。
そのため、認知行動療法では、不安を下げるためだけに行っている過剰な準備や確認を、少しずつ減らしていくことがあります。
例えば、「人に話しかけるときは、事前に話す内容を準備しておかないとうまく話せない」と考えている場合です。そこで、あえて事前の準備を少し減らして、話しかけてみます。
すると、「準備をしなくても、問題なく話すことができた」という経験が得られるかもしれません。
あるいは、途中で言葉に詰まったとしても、言い直すことで会話を続けられるかもしれません。
このように、実際に試してみて、予想していたことと実際に起こったことを比べる方法を「行動実験」といいます。
何も問題が起きないことだけでなく、多少うまくいかなくても対処できることや、不確実な状況にも少しずつ慣れていくことを目指します。
もちろん、必要な準備までやめる必要はありません。無理のないところから、過剰な準備や確認を減らしていきます。
リラクセーションで身体の緊張をゆるめる
不安は、こころだけでなく身体の緊張も伴います。
不安が長く続くと、身体の力が抜けにくくなり、疲労や首・肩のこりなどにつながることがあります。そのため、呼吸法や筋弛緩法などのリラクセーションを、不安への対処を助ける補助的な方法として取り入れることもあります。
リラクセーションは、不安が強くなったときだけでなく、普段から定期的に取り組むことも大切です。リラックスした状態を体験しておくことで、自分の身体が緊張していることにも気づきやすくなり、早めに休息をとることにもつながります。
ただし、常に不安や緊張をなくそうとする必要はありません。不安があっても必要な行動ができることと、必要なときに身体を休められることの両方を目指していきます。
心配が止まらないときは
不安の仕組みがわかっていても、長年続けてきた心配や準備を減らすことは、簡単ではありません。
「心配しすぎだとわかっているのに、考えることをやめられない」
「準備しなくても大丈夫だと思いたいけれど、不安でなかなか行動できない」
そういうときもあると思います。不安が強く、日常生活に大きな支障が出ている場合には、医療機関で薬物療法を含めた治療について相談しましょう。
一人で取り組むことが難しい場合には、認知行動療法などの専門家と一緒に進めていきましょう。認知行動療法では、どのような場面で不安が強くなり、どのような心配や行動が続いているのかを整理しながら、その人に合った方法を考えていきます。
まとめ
不安や心配は、私たちが問題に備えたり、危険を避けたりするために役立つことがあります。
一方で、心配することが習慣になると、必要以上に準備や対策を繰り返したり、休んでいるときにも心配が続いたりすることがあります。
認知行動療法では、不安を強める考え方や「心配は役立つ」という捉え方を見直し、過剰な準備や確認を少しずつ減らしていきます。
不安を完全になくすのではなく、不安があっても、心配に振り回されずに日常生活を送れるようになることを目指します。
参考文献・参考資料
- デビッド・A・クラーク、アーロン・T・ベック著、坂野雄二監訳(2013)『不安に悩まないためのワークブック:認知行動療法による解決法』金剛出版。
- Wells, A. (1995). Meta-cognition and worry: A cognitive model of generalized anxiety disorder. Behavioural and Cognitive Psychotherapy, 23(3), 301–320.
- National Institute for Health and Care Excellence(NICE). Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management(CG113).
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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