うつ病と診断されて治療を続けているのに、なかなか症状が改善しない。
あるいは、いったん良くなって復職したものの、何度も体調を崩してしまう。
このようなときには、うつ病そのものへの対応だけではなく、ほかの問題が重なっていないかを考えることもあります。
もちろん、症状が改善しないからといって、必ず別の病気があるわけではありません。ただ、うつ病と似た症状を示す問題や、うつ病と重なってみられる問題もあります。
そのため、必要に応じて医師や専門家に相談しながら、これまでの経過を振り返ってみることも大切です。
この記事のポイント
- 気分の波と双極症について
- 仕事や人間関係のストレスと発達特性について
- 強い不安に悩まされる場合について
双極症が隠れていないか
うつ病のような気分の落ち込みを繰り返している場合には、これまでに「気分が異常に高揚した時期」や「活動性が高くなった時期」がなかったかを振り返ることがあります。
たとえば、
- あまり眠らなくても平気だった
- 普段より活動的になった
- 次々に予定を入れて活動した
- 普段より話し続けたり、考えが次々に浮かんだりした
- 衝動的な買い物など、普段とは違う行動が増えた
といった経験です。
こうした状態が過去にあったからといって、それだけで双極症と診断されるわけではありません。しかし、過去の気分の変化を含めて診断を考えることは大切です。
「これまでうつ病だと思っていたけれど、以前に気分が高揚して活動的になった時期があった」という場合には、そのことを主治医に伝えてみるとよいでしょう。
発達症の特性が影響していないか
仕事を始めてから、対人関係や仕事の進め方で困ることが増えた場合には、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達症の特性が関係していることもあります。
たとえば、
- 曖昧な指示を理解することが難しい
- 複数の仕事を同時に進めることが苦手
- 急な予定変更への対応が難しい
- 職場の暗黙のルールを理解しにくい
- 注意がそれやすく、仕事でミスが続いてしまう
といった困りごとです。
子どもの頃には大きな問題として捉えられていなかった人でも、仕事の内容や環境が変わることで、成人になってから困りごとが目立つことがあります。
こうした場合には、「自分が仕事に向いていない」と考えるだけではなく、自分の特性と仕事の環境との組み合わせを考えてみることもできます。
必要に応じて専門機関に相談し、自分の得意・不得意を整理したり、仕事の進め方や環境を調整したりすることも考えられます。
強い不安が続いていないか
うつ病では、不安の問題が一緒にみられることもあります。「仕事に戻るのが怖い」という気持ちは、休職していた方にとって自然なものです。
しかし、
- 仕事のことを考えると強い不安が続く
- 不安のために眠れない
- 「また失敗するのではないか」と繰り返し考えてしまう
- 不安のために必要な行動を避けてしまう
といった状態が続いている場合には、単なる復職への不安だけではなく、不安症などの問題が関係している可能性もあります。
不安が強い場合には、不安そのものへの対処を考えることも、復職後の生活を安定させるうえで役立つことがあります。
「うつ病だから」と一つの原因だけで考えない
うつ病と診断されても、ほかの問題が重なっていることはあります。
そのため、なかなか改善しないときや、復職しても同じような問題を繰り返してしまうときには、職場の環境調整やストレス対策だけでなく、症状について振り返ってみることも必要です。
もちろん、自分だけで判断する必要はありません。症状が続いている場合には主治医に相談し、必要に応じて心理士などの専門家と一緒に、これまでの症状や生活上の困りごとを整理していくこともできます。
うつ病の改善や再発予防を考えるときには、「うつ病だから」と一つの原因だけで考えるのではなく、自分にどのような問題が重なっているのかを含めて考えることが大切です。
参考文献
- 日本うつ病学会.うつ病診療ガイドライン2025.
- 日本うつ病学会.日本うつ病学会診療ガイドライン 双極症2023.医学書院,2023.
- Choi WS, Woo YS, Wang SM, Lim HK, Bahk WM. The prevalence of psychiatric comorbidities in adult ADHD compared with non-ADHD populations: A systematic literature review. PLoS One. 2022;17(11):e0277175.
- Hollocks MJ, Lerh JW, Magiati I, Meiser-Stedman R, Brugha TS. Anxiety and depression in adults with autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis. Psychol Med. 2019;49(4):559-572.
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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