うつ病は薬なしでも治る?薬を飲まないときはどうする?

うつ病は薬なしでも治る?薬を飲まないときはどうする?

「うつ病は、薬を飲まなくても治るの?」

薬を飲むことに不安があったり、できれば薬を使わずに良くなりたいと思う方もいると思います。この話と関連して、プラセボ効果の話が出てくることがあります。
プラセボとは、新しい薬が病気の改善に効果があるのかを調べるために、比較対象として使われるものです。薬の成分を含まないものが用いられることが多く、うつ病の治験では、プラセボでも一定の割合で症状が良くなることが知られています。
こうした話を聞くと、「それなら、うつ病は薬を飲まなくても治るのでは?」と思うかもしれません。しかし、プラセボを飲んだ人が改善したからといって、「薬を飲まなくても自然に治る」という意味ではありません。治験では、薬を受け取って終わりではなく、定期的に医療機関を受診し、医師の診察を受けたり、自分の症状や生活の変化を振り返ったりします。

つまり、プラセボを飲んでいる人は「何もせずに過ごしている人」ではないのです。

また、カウンセリングをしていると、「特に何かをしたわけではないけれど、自然とうつ病が良くなった」という話を聞くことがあります。しかし、詳しく話を聞いていくと、何かをきっかけに少し生活のパターンが変わり、それによって少し気分が楽になる。その小さな変化がゆとりとなり、さらに別の行動につながり、少しずつ状態が改善していく、といった経過をお聞きすることがあります。こうした変化は一つひとつが小さいため、本人も「何が良かったのか」をはっきり意識していないことがあります。

認知行動療法(CBT)で生活のパターンを見直す

うつ病の改善に役立つ方法の一つに認知行動療法(CBT)があります。
認知行動療法には、行動パターンを変えていくことで気分の改善を目指す行動活性化という方法があります。気分が良くなるのを待つのではなく、小さな行動を試し、「楽しみ」や「達成感」などを体験できる活動を探していきます。
例えば、

  • 朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる
  • 短時間でも外に出る
  • 誰かと話す
  • 比較的好きな家事を15分やってみる

などがあり、できる範囲で実際に活動して、気分が変わるか確かめます。「自然に良くなった」という人の場合も、振り返ってみると、こうした生活の中の小さな変化が重なっていた可能性があります。ただ、自分一人で生活を振り返っても、「何を変えればいいのか分からない」と思ったり、「散歩したほうがいい」と頭では分かっていても、それができないこともあります。

そして、そんな自分を「頑張れないダメな自分だ」と責めてしまい、なかなか改善の糸口をつかめないこともあります。
認知行動療法では、行動だけでなく、そのときの考え方にも目を向けます。
例えば、「何もできない自分はダメだ」と考えていることに気づいたり、「今の自分にできることは何だろう」と考え直したりしながら、自分に合いそうな活動を探していきます。
具体的には、エネルギーがない状態なのに、旅行に行こうとか、運動をしようというのは難しいと思います。そのときは、読書、音楽を聞く、コーヒーの香りを楽しむ、猫の動画を見るなど、室内で落ち着いて過ごせる活動の方がいいかもしれません。
このように行動パターンを変えたり、自分に合った活動が見つけにくいときは、認知行動療法など、うつ病に用いられる心理療法について専門家に相談してみるのも一つの方法です。
一方で、症状が強く毎日がとてもつらい場合には、我慢せず医療機関に相談し、薬による治療を含めて方法を検討することも大切です。

まとめ

「薬を飲むか、飲まないか」という二択だけで考える必要はありません。
薬を飲まない場合も、「何もしないで様子を見る」ということだけではなく、今の生活や困っていることを整理したり、いろいろな活動を小さく試したりして、どの活動が気分の改善に良いか探してみてもよいでしょう。自分の状態や希望に合った方法を考えていけばよいのです。
「医療機関に行くほどなのかな……」と迷っている方は、まずカウンセリングなどで今の状態や困っていることを相談してみるのも一つの方法です。

関連記事
うつ病について知りたい方はこちらもご覧ください。
→うつ病とは?|症状・原因・治療について
→うつ病に対する認知行動療法(CBT)の進め方
→がんばっているのに結果が出ないのは、怠けているから?

参考文献・参考資料

原井宏明(2008)「治験責任医師の仕事から学んだこと:プラセボ反応と臨床家のバイアス」『行動科学』46(2), 3–12.

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
詳細なプロフィールはこちらをご覧ください。