うつ病で休職したらどう過ごす?休養から回復まで

うつ病などのメンタルヘルス不調で休職すると、「まずは休んでください」と言われることがあります。でも、いざ仕事から離れて家で過ごしてみると、

  • この先どうなるんだろう
  • 本当に復職できるのだろうか
  • 復職しても、また体調を崩すのではないか
  • 職場に迷惑をかけてしまって、戻る顔がない
  • 働く能力がなくなったように感じる
  • 休んでいるのに、何もする気になれない

など、さまざまな不安や自責感が出てくることがあります。「休んだほうがいい」と分かっていても、休んでいる間に何をすればいいのか分からない。そんな方も少なくありません。休職中の過ごし方は、回復の段階によって変わってきます。ここでは、休職中の過ごし方を大きく3つの段階に分けて説明します。大切なのは、最初から「復職できる状態」を目指さないことです。その時々の回復段階に合わせて、できることを少しずつ増やしていきましょう。

① 休む時期|まずは心身を休める

休職した直後は、とにかく仕事から離れて、心身を休めることが大切です。この時期は、基本的には十分な睡眠をとりましょう。人によっては、一日の大半を寝て過ごすこともあるかもしれません。食欲がない場合は、無理に食べようとせず、食べやすいものを少しずつとるようにしましょう。
休職したばかりの時期は、「規則正しい生活をしなければ」「毎日3食きちんと食べなければ」と頑張りすぎるよりも、まずは心身の負担を減らすことを優先します。

この時期に注意したいこと

休職すると、仕事をしていないことへの焦りから、
「早く復帰しないと職場に迷惑をかける」
「休んでいるのだから、せめて家事くらいはしなければ」
「生活リズムを整えなければ」
など、「何かをしなければ」と考えてしまうことがあります。しかし、そのように頑張ろうとしても、体が動かなかったり、思うようにできなかったりすると、「休んでいるのに何もできない」と自分を責めてしまうことがあります。
休職直後は、体だけではなく、こころも休ませることが必要な時期です。何かをしようとすることで焦りが強くなるのであれば、無理に活動する必要はありません。仕事のことを考えてしまって休めない場合は、仕事に関係する書類やパソコンなどを目に入らない場所に置くなど、仕事から距離をとって落ち着いて休める環境をつくることも大切です。
不安が強かったり、眠れなかったり、気持ちが落ち着かなかったりする場合には、主治医に相談しましょう。必要に応じて、治療や薬について調整を検討することもあります。

この時期に大切なのは、「何かをすること」ではなく、「休むこと」です。

② リハビリの時期|少しずつ活動を増やす

休養を続けているうちに、
「少し退屈してきた」
「日中に起きていても、それほどつらくない」
「少し何かしてみようかな」
と感じるようになることがあります。こうした変化が出てきたら、少しずつ生活リズムを整えたり、活動量を増やしたりしていきます。ただし、ここでも一気に元の生活に戻そうとする必要はありません。

まずは起きる時間から整える

生活リズムを整えるときには、就寝時間を無理に早めるよりも、まず起床時間を少しずつ整えていきましょう。ただし、うつ状態では、朝起きること自体が大きな負担になることもあります。そのため、最初から「毎朝7時に起きる」といった目標を設定するのではなく、できるだけ同じ時間帯に起きることを意識してみましょう。朝起きたらカーテンを開けて朝の光を浴びるなど、無理なくできることから始めても構いません。
ある程度できるようになったら、起床時間を少しずつ早めていきます。一度に大きく変えるのではなく、数日から1週間程度の単位で、無理がないかを確認しながら調整していくとよいでしょう。

日中は「体を起こす」ことから

夜の睡眠を整えるためには、日中の活動も大切です。ただし、いきなり運動を始めたり、たくさんの家事をしたりする必要はありません。「何もしたくない」「すぐに疲れてしまう」という状態なら、まずはベッドから体を起こして、ソファに座るだけでも十分です。少し余裕が出てきたら、

  • 10分程度散歩する
  • 音楽を聴く
  • 気分転換になる家事をする
  • 本を少し読む

など、短時間の活動から始めてみましょう。最初のうちは、「やるべきこと」よりも、「やってもいいと思えること」から選んで構いません。少しずつできることを増やしていきましょう。

この時期に注意したい4つのポイント

① 体を起こせるようになったら、少し活動する

うつ状態では、横になって休むことも大切です。一方で、少しずつ体を起こせるようになってきたら、無理のない範囲でベッドから出て、短時間でも活動する時間をつくっていきましょう。横になって何もせずに過ごしていると、頭の中でさまざまな考えが浮かんでくることがあります。例えば、
「自分はダメな人間だ」
「このまま復職できないのではないか」
「周りに迷惑をかけている」
といった否定的な考えです。こうした考えに繰り返しとらわれてしまうと、さらに気分が落ち込んでしまうことがあります。無理は禁物ですが、体を起こして少しずつ活動することで、考え込む時間を減らしていきます。否定的なことを考え続ける時間を減らしていくことは、気持ちの回復に役立ちます。

② 「やる気が出たら行動する」と考えない

うつ状態では、意欲が低下して「何もする気になれない」ことがあります。そのため、

やる気になる → 行動する

と考えていると、なかなか行動を始められず、「行動できない自分はダメだ」と責めてしまうことがあります。こうした悪循環を避けるためにも、リハビリの時期には、まず小さな活動から始めてみましょう。

小さな活動をしてみる → 気分が少し変わる → 次の活動につながる

という流れをつくっていきます。ただし、うつ状態では、活動しても楽しさや達成感を感じにくいことがあります。そのため、

「何もしないで横になっているよりは少しましだと思えること」

を探してみるのも一つの方法です。ここで大切なのは、資格取得など「将来のために役立つこと」や、家事をたくさんすることではありません。今の自分にとって、少しでも気分が楽になりそうな活動を見つけていきましょう。
こうした方法は、認知行動療法の「行動活性化」と呼ばれています。うつ病の改善に役立つことがわかっている方法の一つです。行動活性化について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
関連記事:行動活性化(リンク作成予定)

③ 食事のリズムにも目を向ける

うつ状態では、睡眠だけではなく食事のリズムも乱れることがあります。体調が少しずつ回復してきたら、無理のない範囲で、できるだけ同じ時間帯に食事をとることを意識してみましょう。
また、満腹になっているのに食べ続けてしまうなど、ストレスや嫌な気持ちを和らげるために食べている場合もあります。こうしたときは「食べないようにする」だけでは、つらい気持ちを和らげる方法がなくなってしまうことがあります。食べること以外にも、気持ちを落ち着けたり、ストレスを和らげたりする方法を少しずつ増やしていくことが大切です。

④ 回復には波がある

うつ状態からの回復には、波があります。

回復は波を繰り返しながら、少しずつ進んでいきます。

例えば、「昨日は散歩できたのに、今日はできなかった」ということもあります。昨日できたことが今日できなかったからといって、必ずしも状態が悪化したということではありません。
うつ状態では、「できなかったこと」に目が向きやすくなることがあります。そのため、できていることに目を向けることも大切なリハビリになります。朝起きることができた。食事を3回とれた。散歩に行けた。今日はゆっくり休めた。このように、日々の生活でできていることに目を向けてみましょう。
回復の途中では、活動できる日とゆっくり休む日があっても大丈夫です。一日ごとの出来・不出来に一喜一憂するのではなく、少しずつ活動が安定していくことを目指していきましょう。

次の記事では「復職に向けた準備」を解説します

ここまで回復してくると、「そろそろ仕事に戻る準備をしたほうがいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、復職には、生活リズムや体力だけでなく、仕事への集中力、職場のストレスへの対処、再発予防など、考えておきたいことがあります。
後編では、職場復帰に向けてどのような準備をしていけばよいのか、再発を防ぐために確認しておきたいこと、リワークなどの支援について解説します。

後編:うつ病の休職から復職するには?復職準備と再発予防

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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