「以前のようにやる気が出ない」
「何をしても楽しく感じられない」
「仕事のことを考えると苦しくなる」
「自分を責め続けてしまう」
このような状態が続くと、「自分はうつ病なのではないか」と不安になることがあります。うつ病は、気分の落ち込みだけではなく、考え方や行動、睡眠や食欲など、心と身体のさまざまな面に影響を及ぼす病気です。
一方で、気分の落ち込みや意欲の低下は、さまざまな背景によって生じます。そのため、つらい気分が続いているからといって、必ずしもうつ病とは限りません。ここでは、うつ病の症状や原因、症状が続きやすくなる悪循環、治療について解説します。
うつ病とは?
うつ病は、気分の落ち込みや興味・関心の低下、意欲の低下などがみられ、それによって仕事や学校、家庭生活などに支障が生じることのある病気です。
「気持ちの問題」や「性格の弱さ」で起こるものではなく、こころだけではなく、睡眠や食欲、疲れやすさ、集中力など、身体を含めたさまざまな面に影響が現れることがあります。
また、「頑張らなければ」と思っていても、心身のエネルギーが低下していることで、以前のように行動できなくなることがあります。
そのため、うつ病のときに「もっと頑張らないといけない」と自分を責め続けてしまい、つらさを強めてしまうこともよくあります。
うつ病の症状
うつ病では、気分だけではなく、さまざまな症状が現れることがあります。
- 落ち込む、気持ちが晴れない
- これまで楽しめていたことに興味がわかない、楽しめない
- 食欲がない、または食べすぎる
- 眠れない、または眠りすぎる
- 動作が遅くなったり、落ち着かずそわそわしたりする
- 疲れやすい、何をするにもおっくうに感じる
- 集中できない、頭が働かないように感じる
- 自分には価値がない、悪いことをしたと自分を責めてしまう
- 消えてしまいたい、死にたいと考えてしまう
すべての症状が現れるわけではなく、人によって症状の現れ方や程度は異なります。また、身体の不調が目立ち、「気分が落ち込んでいる」という自覚があまりない場合もあります。
うつ病の原因
うつ病は、仕事や家庭、人間関係などのストレスがきっかけになることもあります。ただし、一つの大きな出来事が原因になるとは限りません。本人も気づかないような小さなストレスや疲労が長期間積み重なっている場合もあれば、生活環境の変化や身体的な要因など、さまざまな要因が重なって症状が現れることもあります。そのため、ストレスが思い浮かばないという場合でも、これまでの生活やストレス、心身の状態などを全体的に振り返っていくことが大切です。
うつ病を維持する悪循環
うつ病では、気分の落ち込みだけではなく、考え方や行動、睡眠、人との関わりなどがお互いに影響し合い、症状が続きやすくなることがあります。たとえば、
気分が落ち込む
↓
何をするにもおっくうになる
↓
活動する機会が減る
↓
気分転換や人との関わりが少なくなる
↓
さらに気分が落ち込む
といった悪循環が生じることがあります。また、
「何もできない自分はダメだ」
「このまま良くならないのではないか」
といった考えが浮かび、自分を責めたり、先のことを悲観したりすることで、さらに行動しづらくなることもあります。こうした悪循環の形は人によって異なります。認知行動療法(CBT)では、このような気分・考え方・行動などのつながりを整理し、無理のないところから少しずつ悪循環を変えていくことで、つらさの軽減や生活の改善を目指します。
うつ病の治療
うつ病が疑われる場合には、まず医療機関で診断や症状の評価を受けることが勧められます。治療では、症状の程度や生活状況などに応じて、
- 十分な休養
- 生活リズムの調整
- 薬物療法
- 心理療法(カウンセリング)
などを組み合わせながら、回復を目指します。うつ病のカウンセリングの代表的なものの一つが、認知行動療法(CBT)です。
複数の国のガイドラインでうつ病に対しては薬物治療と認知行動療法が推奨されており、併用も有効とされています。認知行動療法では、現在の生活の中で生じている気分や考え方、行動などのつながりを整理し、つらさを維持している悪循環に働きかけていきます。
気分の落ち込みにはさまざまな背景があります
気分が落ち込むからといって、すべてがうつ病とは限りません。医療機関では、症状の種類や程度、続いている期間、これまでの経過、生活への影響などを総合的に評価し、
- うつ病の診断基準を満たす状態なのか
- 適応障害など、別の状態が関係しているのか
- 双極症など、他の病気が関係していないか
などを検討します。また、診断基準を満たさない場合でも、気分の落ち込みやストレスによって、つらさや生活上の困りごとを抱えていることがあります。
「病気ではないから我慢するしかない」と考える必要はありません。例えば、不眠だけが続いている場合でも、医療機関では睡眠薬などによる治療が行われることがあります。認知行動療法では、今の生活の中で何に困っているのかを整理し、できることから対処、改善を目指していきます。つらさを一人で抱え込まず、生活への影響が大きくなる前に、早めに専門家に相談することも大切です。
まとめ
うつ病は、気分の落ち込みだけではなく、考え方や行動、睡眠、食欲、疲れやすさなど、心と身体のさまざまな面に影響を及ぼす病気です。また、気分の落ち込みがあるからといって、すべてがうつ病とは限りません。適応障害や双極症など、別の状態が背景にあることもあれば、「診断がつくほどではないけれど、毎日がつらい」と感じながら過ごしている方もいます。
症状が続いている場合には、一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談することで自分の状態を整理しましょう。認知行動療法は、うつ病に対する治療法の一つとして用いられるだけでなく、診断の有無にかかわらず、生活の中で何に困っているのかを整理し、その方に合った対処方法を一緒に考えていくこともできます。
次の記事では、認知行動療法(CBT)がどのように悪循環に働きかけ、回復を支えていくのかを詳しくご紹介します。
▶ 次の記事はこちら:うつ病に認知行動療法(CBT)が役立つ理由
参考文献・参考資料
NICE guideline on depression in adults: treatment and management (NG222).
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
