執筆者:臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で20年以上心理支援に従事し、認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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前の記事では、復職の目安として、
- 働く意欲
- 安全に通勤できること
- 仕事に必要な活動を続けられること
- 生活リズムが安定していること
- 活動による疲労が翌日には回復すること
などについて説明しました。では、実際に復職できそうかどうかを、どのように確認していけばよいのでしょうか。復職前には、実際の通勤や仕事に近い活動を試してみることで、自分の体力や集中力、疲労の程度を確認することができます。
この記事のポイント
- 実際の通勤を試して、通勤による負担や翌日の体調を確認する
- 仕事に近い活動を行い、集中力や体力、疲労の程度を確認する
- 試し出勤や職場の調整を利用して、無理なく働ける方法を考えておく
復職前に「通勤訓練」をしてみる
復職後の生活を考えるうえで、まず確認したいのが通勤です。普段は電車やバスに乗ることができていても、実際の通勤時間帯になると、混雑によって思った以上に疲れてしまうことがあります。
そのため、復職後と同じ時間に起きて、実際の通勤経路を使って職場の入り口まで行き、その後帰宅する「通勤訓練」を行う方法があります。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、復職に向けた準備として、通常の出勤経路を使って職場付近まで移動する「通勤訓練」が示されています。
例えば、
- 復職後と同じ時間に起きる
- 実際の通勤経路を利用する
- 通勤時間帯の電車やバスに乗る
- 職場の入り口まで行って帰宅する
- 起床時間や疲労度などを記録する
といった方法です。通勤経路を実際に利用することで、通勤時間や混雑による負担なども確認できます。最初は短い時間から始め、体調をみながら実際の通勤に近づけていく方法もあります。
「できたか」だけでなく翌日の状態を見る
通勤訓練では、「職場まで行けたか」だけを見るのではありません。例えば、「行きは問題なかったけれど、帰宅するとかなり疲れていた」「翌日まで疲労が残った」ということが分かる場合があります。そこで、
- 起床時間
- 睡眠時間
- 通勤時の混雑
- 不安や気分の変化
- 疲労度
- 帰宅時間
- 翌日の体調
などを記録してみましょう。1回だけではなく、何回か行ってみることで、自分にとってどの程度の負荷なら継続できるのかが分かりやすくなります。こうした記録を主治医や産業医に見せながら相談することもできます。
実際に復職支援をしていると、自分の体調よりも課題を優先してしまう方もいます。課題は達成するものの、疲労感を無視して活動を続け、疲れ果ててしまいます。自分の体調に気づけるようになることは、再発予防の観点からも重要です。
仕事に近い活動を試してみる
復職前には、仕事に近い活動を取り入れてみることも大切です。
例えば、
- 新聞を読む
- 新聞の内容を要約する
- 読書をする
- パソコンで作業する
- 資料を作成する
- 一定時間机に向かう
などです。仕事内容によって、必要になる活動は異なります。
パソコン作業が中心の仕事であればパソコンを使った作業、身体を使う仕事であれば無理のない範囲で身体活動を行うなど、実際の仕事に近い活動を取り入れてみるとよいでしょう。
ただし、ここでも「できるだけ多くのことをこなす」ことが目的ではありません。仕事に近い活動を続けたときに、どの程度疲れるのか、翌日に回復しているのかを確認することが大切です。
職場に入ることが難しい場合には、職場の近くの図書館などで一定時間過ごしてみる方法もあります。厚生労働省では、図書館などで仕事に近い活動を行うことを「模擬出勤」の例として示しています。
試し出勤やリワークを利用する
職場によっては、復職前に試し出勤などの制度を利用できる場合があります。実際の職場やそれに近い環境で一定時間過ごすことで、通勤や仕事への適応が可能かどうかを確認することができます。
また、休職期間が長くなっている場合には、リワークを利用する方法もあります。リワークでは、決められた時間に通所して、作業やプログラムに取り組みます。生活リズムを整えたり、日中の活動量を増やしたりしながら、集中力や体力を確認し、徐々に仕事に近い活動へ移行していきます。
「もう長く休んでいるから、今さら戻れないのではないか」と感じている場合にも、復職に向けた支援の一つとして利用を検討できます。
復職後の勤務時間や業務量を調整する
復職するときには、最初から以前とまったく同じ働き方に戻るのではなく、職場で一定の調整を行うことがあります。
例えば、
- 時差出勤
- 短時間勤務
- 業務量の調整(残業等)
- 業務内容の調整(出張等)
- テレワークの併用
などです。例えば、通勤ラッシュの負担が大きい場合には時差出勤、長時間勤務が負担になる場合には勤務時間を短くするなど、負担を減らす方法を職場と相談します。
こうした調整が可能かどうかは、職場の制度や仕事内容によって異なります。必要な場合には、主治医や産業医、人事担当者などと相談しながら、復職後の働き方を考えておきましょう。
まずは元の職場への復帰を考える
職場復帰では、元の職場への復帰が基本です。休職中に体調が回復してきても、異動や転職をすると、新しい仕事内容を覚えたり、新しい人間関係を築いたりする必要があります。復職直後はそれ自体が負担になるため、まずは元の職場に戻ることを基本として考えます。
ただし、体調を崩した原因となったストレス要因が職場に明確に残っている場合には、復職後の環境について慎重に検討する必要があります。例えば、業務量や人間関係など、同じ負担がそのまま残っている場合です。
そのような場合には、異動などによって環境を調整できないか、職場と相談することも必要になるでしょう。
復職前に確認しておきたいこと
復職前には、単に「仕事ができそうか」だけではなく、実際の復職後の生活をイメージして確認してみましょう。例えば、
- 決まった時間に起きられるか
- 実際の通勤経路を安全に利用できるか
- 一定時間、仕事に近い活動を続けられるか
- 活動した後に十分休めば翌日に回復できるか
- 復職後の勤務時間や業務量を無理なく続けられそうか
- 職場に残っているストレス要因について対応を考えているか
といった点です。大切なのは、復職前に「以前と同じように働ける状態」をつくることではありません。復職後の生活をある程度想定しながら、今の自分にどの程度の負荷なら継続できるのかを確認していくことです。
復職できる状態になったとしても、復職後には仕事量や人間関係など、実際に職場に戻ってみないと分からないストレスが出てくることがあります。そのため、復職前から「どのような状況でストレスを感じやすいのか」「そのときにどのように対処するのか」を考えておくことも大切です。
次の記事では、復職後に安定して働くために、仕事上のストレスや自分自身の考え方・行動のパターンをどのように整理し、再発予防につなげていくのかについて解説します。
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参考文献・参考資料
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
