強迫症のカウンセリング体験記|認知行動療法(CBT)の進め方

※この体験記は、認知行動療法(CBT)のカウンセリングの流れをイメージしていただくために作成した架空のお話(事例)です。実在の人物・事例をもとにしたものではありません。

カウンセリングに行くまで

手洗いの回数が多くなり、お風呂の時間も長くなってしまった。昔はなんとも思わなかったが、最近は「汚れが落ちた」とは思えず、お風呂に入ることもしんどい日が多い。通院はしているが、症状は改善しない。主治医からは行動療法を勧められ、インターネットで調べてみると、「手洗いや消毒をやめることで病気を治す方法」と書いてあった。とてもじゃないが、そんなことはできそうにない。でも、このまま毎日長時間手洗いをすることもつらいので、カウンセリングを受けてみようと思った。「手を洗いすぎなんだ。もうやめなさい」と叱られたらどうしよう。そんな不安な気持ちで、カウンセリングを迎えた。

カウンセリング

不潔恐怖のことを相談すると、まず強迫症の悪循環について説明を受けた。また、いきなり「手を洗うな」とは言われず、まずは、何に触ると手を洗うのか、入浴中にどのような洗い方をすることで時間がかかっているのかを調べてくるように言われた。
何回かのカウンセリングで、触りたくないものを列挙して不安階層表を作成した。また、入浴中にどんな洗い方をしていることで入浴時間が長くなっているのかも整理した。そのうえで、不安階層表の中から、まず何を触るのかを話し合った。
カウンセラーからは、それを触ったあとは手洗いをせず、いつも通り生活すること、入浴後も触るように言われた。そして、ERPを効果的に行うためのポイントについても説明を受けた。

効果的な曝露(エクスポージャー)のポイント

① 不安が高まるところまで曝露する
・「汚れたかもしれない」ではなく、実際に「汚れた」と実感する状況に触れる
・不安を避けず、そのまま感じる

② 不安を下げる行動をしない
・手を洗わない
・消毒しない
・「これくらいなら大丈夫」と考えて安心しようとしない
・「あそこは汚していないから大丈夫」と確認しない

③ 不安が自然に低下するまで十分な時間をとる
・手洗いなどで不安を下げるのではなく、そのまま過ごす
・練習時間は1時間半~2時間程度が一つの目安
(厚生労働省の「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル」P22~)

④ 毎日繰り返す
・1回だけではなく、毎日続ける
・繰り返すことで、汚れへの不安に慣れていく

私は「ベッドを触る前は1回だけでも手を洗いたい」と伝えたが、「すべてに汚れが広がっていると思えないと、ERP(曝露反応妨害法)の効果が軽減してしまう」と言われた。そして、どんなに汚れが広がって不安になっても、それでおかしくなることはないと諭され、課題を決めてやってみることにした。
最初はすごくためらったが、思い切って触ってみた。入浴後も触り、そのままベッドで寝たときは、「終わった」と絶望的な気持ちになった。それでも、何日も汚れたままでいるうちに、「汚れているし、しょうがない」と思うようになった。
触っても手を洗おうと思わなくなり、「どうせ汚れるから」と入浴時間も短くなった。その後、不安階層表を進めて、汚いと思うものにすべて触れるようになった。今は手洗いの回数は減ったし、入浴時間も以前と同じくらいになっている。
カウンセラーからは、今後も汚いと思っても手洗いはしないこと、汚いと思うものがあったら、むしろ触って慣らすこと、それが続けられれば再発予防につながると言われて、カウンセリングを終えた。

まとめ

この体験では、最初から「手洗いをやめる」ことを求められたわけではありません。まず、どのような場面で不安が生じ、どのような手洗いや確認によって不安を下げているのかを整理してから、曝露を始めています。強迫症の症状によっては、ERP以外の方法が取り入れられることもあります。
曝露では、不安を感じないようにするのではなく、不安を感じたまま手洗いや確認などで不安を下げず、その状態を続けてみることがポイントになります。最初は強い不安を感じることもあります。実際のカウンセリングではいつもこのように順調に進むとは限りません。なかなか課題に取り組めなかったり、一つの強迫症状が軽くなっても、別の強迫症状が気になることもあります。そのため、症状や生活の状況を確認しながら、取り組む課題を変えたり、進め方を調整したりしながら、少しずつ不安を感じたまま過ごせるようになることを目指して、練習を続けていきます。
セルフヘルプで試してみる方法もありますが、一人で取り組むことが難しい場合は、諦めずに強迫症のCBTやERPに詳しい専門家のサポートを受けることも検討してみましょう。

強迫症の認知行動療法のやり方を知りたい方へ

強迫症に対する認知行動療法、主に曝露反応妨害法(ERP)の具体的な進め方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
強迫症に対する曝露反応妨害法(ERP)の進め方

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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