強迫症(強迫性障害/OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)とは

強迫症は、本来は気にしなくてもよいことが頭から離れなくなったり、不安や不快感が繰り返し生じたりすることで、それを打ち消したり和らげたりするために、同じ確認や行為を繰り返してしまうことが特徴です。
例えば、「財布を落としていないかな」と心配になって、鞄の中を確認したことがある人は多くいると思います。これが強迫症になると、確認しても心配が十分に消えず、繰り返し確認することで多くの時間を費やし、仕事や学業などに大きな支障が生じることがあります。
強迫症は、生涯で100人中1~4人程度が経験するとされる、比較的よくみられる病気です。平均発症年齢は約20歳で、約4人に1人は15歳までに発症するといわれています。本人も「自分の性格の問題」「気にしすぎなだけ」と考えてしまい、専門機関に相談するまで時間がかかることがあります。

強迫症の代表的な症状には、強迫観念強迫行為があります。

強迫観念とは

強迫観念とは、不安や不快感を引き起こす考えやイメージ、衝動(急に何かをしたくなる感覚)が、繰り返し浮かんでくる症状です。自分では「考えたくない」「気にしたくない」と思っていても頭から離れにくく、振り払おうとするほど気になってしまうことがあります。

強迫行為とは

強迫行為とは、強迫観念や、それに伴う不安・不快感を和らげるために繰り返す行為です。例えば、汚れているのではないかと不安になって手を洗うこともあれば、「本当に汚れていないだろうか」と頭の中で何度も考えたり、思い出したりすることもあります。このように、強迫行為には実際に行う行為だけでなく、頭の中で行うものもあります。

強迫症でよくみられる症状

強迫症では、洗浄や確認に関する症状がよくみられます。そのほかにも、不完全さを気にする症状や、縁起を気にする症状など、さまざまなタイプがあります。

1.汚染・洗浄強迫

家の床が汚れているのではないかと心配になり(強迫観念)、床を何度も拭くようになった(強迫行為)。
次第に、床を拭いた後に「まだ汚れが残っているかもしれない」と心配になり(強迫観念)、同じ場所を何度も拭き直すようになった(強迫行為)。
さらに、床を拭いたときに使った雑巾や手にも汚れがついているのではないかと心配になり(強迫観念)、雑巾を交換したり、手を洗ったりするようになった(強迫行為)。
洗浄にかかる時間が増え、いつも「きれいか、汚いか」を考えて疲れ果ててしまっている。

2.確認

① 確認強迫

家から離れるときに、鍵を閉め忘れているのではないかと心配になって(強迫観念)、家に戻って鍵を確認するようになった(強迫行為)。
次第に、鍵をかけたときにも「本当に鍵がかかっているだろうか」と心配になり(強迫観念)、その場で繰り返し鍵を確認するようになった(強迫行為)。
何度確認しても鍵を閉め忘れていないか心配になり(強迫観念)、長時間確認したり、写真を撮ったりするなど、確認することが増えている(強迫行為)。
家を出るまでに時間がかかるようになり、生活がしんどくなっている。

② 加害強迫

車を運転していると、「人を轢いてしまったのではないか」と心配するようになった(強迫観念)。そのため、気になった場所に戻って確認するようになった(強迫行為)。
帰宅後も、気になった場面を思い出しては心配になり(強迫観念)、ドライブレコーダーで確認している(強迫行為)。
車での通勤に時間がかかり、運転することも怖くなって、車の運転をやめようと思っている。

③ 不完全強迫

仕事で書類をチェックしていると、「ちゃんと見られていないかもしれない」と心配になり(強迫観念)、何回も書類を確認するようになった(強迫行為)。
しかし、何度見ても「ちゃんと見られていないかもしれない」と心配になり(強迫観念)、1文字ずつ字の形まで確認するようになった(強迫行為)。
仕事が終わらず残業が増え、このままでは仕事を続けられないのではないかと悩んでいる。

④ 縁起強迫

事故のニュースを見た後に家族のことが思い浮かぶと、「思い浮かんだ家族が事故に巻き込まれるかもしれない」と心配になった(強迫観念)。
そのため、頭の中で家族の無事を何度も確認したり、「大丈夫」と繰り返し考えたりして、不安を打ち消そうとするようになった(強迫行為)。
さらに症状が強くなると、家事などが終わったときに家族のことを思い出しただけでも、「家族に不幸が生じるのではないか」と心配になり(強迫観念)、頭の中で「大丈夫」と繰り返し考えて不安を打ち消そうとしたり、それでも不安が残ると、掃除そのものを最初からやり直したりするようになった(強迫行為)。
そのため家事などを避けるようになり、家族も困るようになっている。

強迫症が生活に与える影響

日常生活への影響

強迫観念が浮かぶ場所や活動を避けるようになることがあります。また、強迫行為に多くの時間がかかることで、学校生活や仕事に支障が生じ、社会生活が困難になることもあります。

家族への影響

症状が強くなると、家族に「これで大丈夫?」と何度も確認を求めたり、家族にも同じように清潔にすることや確認することを求めたり、強迫行為に付き合ってもらったりすることがあります。その結果、家族との間に負担や葛藤が生じることがあります。

うつ病などの併存

強迫症では、うつ病などの精神疾患を併存することがあります。特に、強迫観念や強迫行為への対応に多くの時間やエネルギーを費やしていると、心身ともに疲弊し、気分の落ち込みや意欲の低下につながることもあります。

治療

強迫症に対して推奨されている治療には、薬物療法と認知行動療法があります。

薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択の薬物療法として用いられます。日本では、強迫症に保険適用のあるフルボキサミン(ルボックス®、デプロメール®など)とパロキセチン(パキシル®など)が第一選択として提案されています。
2025年の「強迫症の診療ガイドライン」では、SSRIによって中等度以上の改善がみられるケースは約半数とされています。
認知行動療法は、症状に合わせてどのような技法を用いるかを相談者と一緒に考えていく方法です。強迫症の場合には、曝露反応妨害法(ERP)がよく用いられます。
強迫症は慢性化することも多く、自然に症状がなくなるケースは多くありません。しかし、治療法がない病気ではありません。薬物療法や、ERPを含む認知行動療法によって症状の改善が期待できます。一方、強迫症そのものに対する治療として、認知行動療法以外の一般的なカウンセリングや心理療法については、十分なエビデンスがありません。実際の治療では、症状の程度や生活への影響、これまでの治療への反応、本人の希望などを踏まえながら、薬物療法、認知行動療法のいずれか、あるいは両方を行うかが検討されます。強迫症に対する認知行動療法について知りたい方は下記の記事をご覧ください
関連記事強迫症に対する曝露反応妨害法(ERP)の流れ

参考文献

日本不安症学会・日本神経精神薬理学会(2025)『強迫症の診療ガイドライン 第1版』
厚生労働省『強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)』
金剛出版(2025)『認知行動療法ケースブック』

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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