―「死にたい気持ち」があるときの適切な支援について―
ここでは、「死にたい」「消えてしまいたい」といった希死念慮について、よくある疑問をQ&A形式で整理します。不安な気持ちを抱えながら情報を探している方が、今の自分に合った支援につながることを目的としています。
Q1.死にたい気持ちがあるのは、おかしいことですか?
A.いいえ、おかしいことではありません。
うつ状態や強いストレス、不安が続くと、「死にたい」「消えたい」「いなくなりたい」といった気持ちが出てくることがあります。こころが深く傷ついたり、強い苦痛を感じているときに、こうした気持ちが湧き上がってくることがあります。
希死念慮は、
・「死にたい」とはっきり感じる場合
・「消えてしまいたい」「いなくなりたい」と間接的に表現される場合
があります。
Q2.「死にたい」と考える人は、どれくらいいますか?
A.実は、かなり多くの人が経験しています。
厚生労働省の「令和3年度 自殺対策に関する意識調査」では、全国の18歳以上を対象とした調査で、
・これまでに自殺を考えた経験がある:27.2%
・最近1年以内に自殺を考えた経験がある:9.5%
と報告されています。つまり、これまでに自殺を考えた経験がある人は、約4人に1人。最近1年以内に限っても、約10人に1人ということになります。「死にたい」「消えたい」という気持ちは、特別な人だけが経験するものではありません。
Q3.「死にたい」と思っていても、誰にも相談できません。どうしたらいいですか?
A.「死にたい」という気持ちは、誰にでも話しやすいものではありません。
厚生労働省の同じ調査では、悩みやストレスについて誰かに相談したり助けを求めたりすることに、「ためらいを感じる」人は約4割でした。その理由として最も多かったのが、「家族や友達など身近な人には、相談したくない(できない)悩みだから」というものでした。「死にたい」「消えたい」という気持ちを抱えていても、身近な人には話しづらく、一人で抱えてしまうことがあります。そのため、家族や友人だけでなく、医療機関やカウンセリングなど、専門機関に相談することも一つの方法です。
Q4.死にたい気持ちがあるとき、カウンセリングは受けてもいいのでしょうか?
A.はい。ただし、状態によっては医療機関の受診を優先することが大切です。
死にたい気持ちがある場合、その背景には、
・仕事や人間関係の悩み
・経済的な問題
・体調や睡眠の乱れ
・うつや不安などのこころの不調
など、複数の問題が重なっていることがあります。いくつもの問題が重なると、気持ちや考えを整理することが難しくなり、「どうしてこんなに苦しいのか分からない」と感じてしまうこともあります。
カウンセリングでは、
・今抱えている問題を一緒に整理する
・気持ちを言葉にしていく
・今できることや対処方法を考える
・認知行動療法(CBT)を用いて、うつや不安への対処を見直す
といった支援を行います。こうした取り組みを通して、つらさが少しずつ和らぎ、死にたい気持ちが軽くなっていくことがあります。
Q5.どんなときは、カウンセリングより医療機関の受診を優先したほうがいいですか?
A.死にたい気持ちが強く、切迫しているときです。
たとえば、次のような状態がある場合は、自殺の危険性が高まっている可能性があります。
・自殺するための準備を始めている
・「いつ・どこで・どのように」といった具体的な計画を立てている
・自分を傷つけたい衝動が強く、それを抑えることが難しい
・すでに自分を傷つけたり、自殺を試みたりしている
このような場合は、カウンセリングよりも、まずは安全を確保し、医療機関や救急など必要な支援につながることを優先してください。カウンセリングルームでは、入院を含む医療的な対応や、緊急時の継続的な見守りを行うことはできません。「カウンセリングを予約する → 予約日に相談する → その後に医療機関を受診する」という順番では、医療機関につながるまでに時間がかかってしまいます。
そのため、今すぐ自分を傷つけてしまうかもしれないと感じるほど切迫している場合は、カウンセリングの予約よりも医療機関への相談を優先してください。また、死にたい気持ちが切迫していない場合でも、背景にうつ病などのこころの不調が隠れていることがあります。気分の落ち込みや不安、不眠などが続いている場合は、医療機関への相談も検討してください。
Q6.死にたい気持ちが切迫しているときは、どうすればいいですか?
A.一人にならず、ためらわずに周囲の人や医療機関に助けを求めてください。
今すぐ自分を傷つけてしまう可能性がある場合は、一人で抱え込まず、家族や身近な人に「今、自分を傷つけてしまいそう」と伝え、安全を確保してください。
すでに自殺を実行しようとしている、刃物などの危険な物を持っている、または自分や周囲の人の安全を確保することが難しいほど切迫している場合は、119番や110番など、緊急の支援につながってください。自分で電話をかけることが難しい場合は、近くにいる人に代わりに連絡をお願いしてください。
一方、死にたい気持ちはあるものの、今すぐ自分を傷つけるつもりはない場合には、電話やSNSなどの相談窓口に一度相談してみるのもよいでしょう。
[相談窓口:電話相談|自殺対策|厚生労働省]
最後に:回復後のカウンセリングという選択肢
死にたい気持ちが出てくることは、珍しいことではありません。そしてそれは、適切な治療や支援によって、軽くしていくことができます。
・死ぬ準備をしている
・具体的な計画がある
場合は、まず医療につながってください。その後、気持ちが落ち着き、主治医とも相談したうえで、認知行動療法(カウンセリング)のタイミングを考えましょう。良くなるための方法は一つではありません。焦らず、今の状態に合った支援を一つずつ選んでいきましょう。
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執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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