ストレスやメンタルヘルスの問題を抱えているとき、
「誰かに相談したい」
と思うのは、とても自然なことです。
しかし、実際に相談先を探してみると、
- 精神科・心療内科の医師による診察
- 心理士などによるカウンセリング
- 認知行動療法(CBT)などの心理療法
など、さまざまな言葉が出てきます。
「精神療法と心理療法は何が違うの?」
「カウンセリングとCBTは同じなの?」
「精神科の診察でもカウンセリングをしているの?」
と、よく分からなくなる方もいるかもしれません。ここでは、これらの言葉の違いと、それぞれの役割について分かりやすく整理します。
この記事のポイント
- 精神療法・心理療法・カウンセリングの違いについて整理します
- 精神科・心療内科の診察とカウンセリングでは、目的や時間、相談できる内容が異なります
- 認知行動療法(CBT)は、カウンセリングで用いられる心理療法の一つです
精神療法・心理療法・カウンセリングはどう違うの?
まず、これらの言葉は完全に別々のものではありません。
精神療法や心理療法という言葉は、心理的な問題に働きかけるさまざまな方法を指す言葉として使われています。
その中には、認知行動療法(CBT)や支持的精神療法、対人関係療法など、さまざまな方法があります。
一方、カウンセリングという言葉は、悩みや困りごとについて相談し、話し合うことを広く指して使われています。
そのため、「カウンセリング=特定の心理療法」というわけではありません。
たとえば、「CBTによるカウンセリング」という場合には、カウンセリングという面接の形で、認知行動療法という具体的な心理療法を行っていると考えると分かりやすいでしょう。
精神科の診察では何をするの?
精神科や心療内科では、医師が症状や生活状況などを確認し、診断や治療方針を検討します。
たとえば、
- 症状の評価や診断
- 睡眠や食事など生活状況の確認
- 薬の効果や副作用の確認
- 必要に応じた薬の調整
- 生活上の問題についての助言や相談
などが行われます。
診察の中で、患者さんの精神面に働きかける関わりが行われることもあります。
診療明細に「精神療法」と記載されていることがありますが、これは精神科・心療内科の診察の中で行われる精神面への治療的な関わりを、診療報酬の項目として示したものです。
たとえば、話を聞きながら現在の問題を整理したり、助言をしたり、今後の対処方法を一緒に考えたりすることがあります。
精神科の診察とカウンセリングは何が違うの?
精神科・心療内科の診察とカウンセリングには、重なる部分もありますが、一般的には目的や時間の使い方が異なります。
精神科・心療内科では、症状の評価や診断、薬物療法などを含めた医療的な管理を行います。
一方、心理士などによるカウンセリングでは、悩みや生活上の問題を整理し、心理的な問題について継続的に取り組みます。
たとえば、
- 「なぜ同じ悩みを何度も繰り返してしまうのか」
- 「どうすれば、今より楽に過ごせるのか」
- 「ストレスにどう対処していけばよいのか」
といったテーマについて、時間をかけて考えていきます。
ただし、カウンセリングの内容は、実施する人の専門性や採用している心理療法によって異なります。
また、精神科・心療内科の診察でも、医師によって相談や心理的な支援にかける時間や方法は異なります。
精神科の診察は短く、カウンセリングは長い?
「病院ではあまり話を聞いてもらえなかった」という経験から、精神科の診察とカウンセリングの違いを時間の長さで考える方もいるかもしれません。
厚生労働省の調査では、精神科診療所の再診について、5分以上10分未満の診療時間が約8割とされています[^1]。
もちろん、これは調査対象となった医療機関の結果であり、すべての医療機関に当てはまるわけではありません。また、診察時間が短いことが、そのまま医療として不十分という意味でもありません。
診察では、限られた時間の中で症状や薬の効果、副作用などを確認し、必要な治療を判断することが重要になります。
一方、カウンセリングでは、25~50分程度など、まとまった時間を使って、悩みや生活上の問題について継続的に取り組むことがあります。
そのため、「もっと自分の話を聞いてほしい」「困っていることをじっくり整理したい」という場合には、カウンセリングが役立つことがあります。
認知行動療法(CBT)はカウンセリングと何が違うの?
認知行動療法(CBT)は、心理療法の一つです。
カウンセリングという言葉が相談や面接そのものを広く指すのに対して、CBTには具体的な考え方や進め方があります。
CBTでは、
- 悩みや困っていることを整理する
- そのときの考え方や行動に目を向ける
- 問題を維持している悪循環を整理する
- 新しい行動や考え方を実際に試してみる
- その結果を振り返る
といった取り組みを行います。
たとえば、「仕事でミスをする→自分はダメだと考える→自信がなくなる→仕事を避ける→さらに不安になる」という悪循環がある場合、そのどこに働きかけると状況が変わりそうかを一緒に考えていきます。
このように、CBTは「ただ話を聞いてもらう」だけではなく、具体的な方法を使いながら問題に取り組んでいく心理療法です。
心理療法を受けるときは、専門性を確認する
日本では、公認心理師という心理職の国家資格があります。
一方で、心理療法の実施については、特定の資格だけに独占的に認められているわけではありません。
そのため、カウンセリングや心理療法を受けるときには、資格だけでなく、どのような心理療法を専門としているのか、どのような訓練を受けているのかを確認することが大切です。
同じ「カウンセリング」でも、実施する人の知識や経験、受けてきた訓練によって、支援の内容は異なります。
たとえば認知行動療法(CBT)を受けたい場合には、認知行動療法について専門的な訓練を受けているかを確認するとよいでしょう。
精神科の診察とカウンセリングは、どちらを受ければいい?
どちらがよいかは、何を相談したいのかによって変わります。
| 精神科・心療内科の診察 | カウンセリング | |
| 主な目的 | 診断・薬物療法・医療的な管理など | 心理的な問題、現実的な問題などの解決 |
| 主な内容 | 症状や薬の確認、治療方針の検討など | 悩みの整理、考え方や行動、感情へのアプローチ |
| 時間 | 10分未満の診察が8割程度(再診) | 25~50分程度の面接が多い |
| 利用の仕方 | 症状の評価や診断、治療などが必要なときに利用する | 悩みを相談したいとき、問題を整理し、解決に向けて取り組みたいときなどに利用する |
どちらか一方だけではなく、医療機関で診察を受けながら、カウンセリングを併用することもあります。
こんなときにはカウンセリングが選択肢になります
たとえば、
- 同じ悩みを何度も繰り返してしまう
- 自分の考え方や行動のパターンを整理したい
- ストレスとの付き合い方を考えたい
- 薬だけでは解決しにくい問題について相談したい
- 認知行動療法(CBT)に取り組んでみたい
といった場合には、カウンセリングが選択肢になることがあります。
一方で、気分の落ち込みが強い、眠れない、食事がとれない、仕事や日常生活が難しくなっているなど、心身の状態が大きく崩れている場合には、まず医療機関に相談することも大切です。
「もっと話を聞いてほしい」と思ったら
精神科・心療内科の診察とカウンセリングは、同じものではありません。
医療機関では、症状の評価や診断、薬物療法などを含めた医療的な支援が行われます。
カウンセリングでは、悩みや生活上の問題を整理し、必要に応じて心理療法を用いながら取り組んでいきます。
そして、「精神療法」「心理療法」「カウンセリング」という言葉は、医療機関や専門職によって使われ方が異なることがあります。
「カウンセリング」という言葉について
認知行動療法などの心理療法を専門的に扱う場では、専門家同士のやり取りの中で、「カウンセリング」とだけ表現するよりも、「認知行動療法を実施する」「曝露を行う」など、具体的な心理療法や技法の名前で表現することがあります。
一方で、一般の方にとっては、「認知行動療法を受ける」よりも、「カウンセリングを受ける」という表現のほうがイメージしやすいこともあります。
そのため、このサイトでは、読者の方に分かりやすくするために、心理療法を用いた面接についても「カウンセリング」という言葉を使って説明しています。
「カウンセリング」という言葉だけでは、実際にどのような支援が行われるのかまでは分かりません。
カウンセリングを受けるときには、
- どのような専門性をもっているのか → 認知行動療法、精神分析など
- どのような方法・技法を使うのか → 曝露、行動活性化など
- どのような問題に取り組むのか → うつ病、復職支援、不登校、対人ストレスなど
を確認してみるとよいでしょう。
「自分の場合は、どのような相談先が合っているのだろう?」
と迷ったときには、まず現在困っていることを整理するところから始めてもよいでしょう。
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- 不安症とは?心配性・考えすぎとの違いや治し方について
参考文献・参考資料
- 厚生労働省.第6回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 資料.令和7年5月12日.
厚生労働省「第6回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 資料」
執筆者
臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
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