がんばっているのに結果が出ないのは、怠けているから?

★★★☆☆(不安・焦りが強まり、生活に影響が出始める段階)

こんな変化はありませんか

仕事では、手を抜いているつもりはない。むしろ、前よりも気を張っている。ミスをしないように何度も確認するし、仕事の段取りを頭の中で何度も考える。先のことまで考えて、できるだけ問題が起きないようにしている。
それなのに、思ったほど仕事が進まない。仕事が終わって家に帰っても、頭の中は仕事のことでいっぱい。夕飯の準備をしながらも、「明日のあれ、どうしよう」「あの仕事、大丈夫だったかな」と考えてしまう。休日に偕楽園を歩いていても、ふと仕事のことが頭に浮かんでくる。せっかくの休日なのに、気持ちが仕事から離れない。
そんな状態が続き、少しずつ余裕がなくなってしまう。ちょっとした予定の変更や、思い通りにいかないことにイライラする。家族の何気ない一言に、普段なら気にならないのに、思わず強い言い方をしてしまう。そのあとで、「なんでこんなことでイライラしたんだろう」「もっと落ち着いていればよかった」と自分を責める。仕事でも家庭でも、頑張っているはずなのに、どこかうまく噛み合わない。そんな日が少しずつ増えていく。

何が起きているのか

この状態は、疲れや意欲の低下に加えて、不安や焦りも強くなり、さらに気持ちが休まりにくくなっている状態として捉えると分かりやすいかもしれません。たとえば、

  • 失敗しないように、常に警戒している
  • 次にやることを、頭の中で何度も考えている
  • 問題が起きないように、先回りして考えている
  • 周囲の反応や評価が気になっている

こうしたことが続くと、仕事をしている間だけでなく、仕事が終わったあとも緊張が続きやすくなります。休んでいるつもりでも、気持ちが仕事から離れず休めていないというケースがよくあります。
そのため、以前なら気にならなかったことに過敏になり「神経質になった」「怒りっぽくなった」と感じることもあります。しかし、背景には、長時間の緊張状態が隠れていることが少なくありません。何度も考え直したり確認したりして安心を得ようとしても、かえって脳の負担が増え、集中力の低下や予期せぬミスにつながってしまいます。
また、この時期になると次のような睡眠の変化が現れる場合もあります

眠る時間は確保しているのに、眠りが浅い感じがする。
夜中に何度か目が覚める。
朝起きても、すっきりした感じがしない。

こうした睡眠の質の低下が、さらに日中の疲労感や集中しにくさを引き起こします。「やる気が出ない」という背景には、こうしたいくつもの悪循環が重なっているケースが多いのです。

「まだ大丈夫」と思って、さらに頑張ってしまう

この時期は、仕事を続けられたり、休日には好きなことを楽しめたり、家族の前で笑えたりすることもあります。そのため、「まだ大丈夫」「気のせいかな」と、自分の小さな変化を流してしまうケースも少なくありません。しかし、仕事の日になると朝から気が重くなり、思うように頑張れなくなって、
「もっと集中しなきゃ」
「ちゃんとしなきゃ」
「こんなことでイライラしてはいけない」
と、自分をさらに追い込んでしまうこともあります。この時期に必要なのは、何かをさらにつけ足して頑張ることではなく、張りつめた状態を少し緩めることです。たとえば、

  • 仕事のことを考える時間をいったん区切る
  • 完璧を目指さず「できる範囲」で終える
  • 予定を詰め込みすぎない
  • 意識して「何もしない時間」をつくる

といったように、あえて休む工夫を取り入れていくことが大切です。「なんで頑張れないんだろう」と自分を責めるのではなく、「それだけ気を張って過ごしていたんだな」と今の自分をねぎらうこと、それが、この悪循環から抜け出す第一歩になります。

相談することも考えてみましょう

ここまで読んで、「自分の状態をうまく整理できない」「少し休んだほうがいいと思うけれど、どうしたらいいのか分からない」「自分をねぎらう方法がわからない」と感じる場合もあるかもしれません。
そもそも、自分の気持ちや今の状況を整理することは、一人ではなかなか難しいものです。心身の余裕がなくなっているときには、なおさらです。
そういうときは、一人で何とかしようとせず、医療機関やカウンセリングなどの専門機関に相談してみるのも一つの方法です。
「まだ病気というほどではない」「こんなことで相談していいのかな」と、相談をためらう方も少なくありません。
しかし、認知行動療法やカウンセリングは、症状が重くなってから受けるものとは限りません。今の状態を一緒に整理し、これ以上つらさが大きくならないように考えていくために利用することもできます。
「もう少し頑張ってから」と我慢を続けるのではなく、少し気になる段階で相談してみることも、自分を守るための一つの選択肢です。
この記事が、今の自分の状態に気づき、必要であれば早めに誰かに相談してみようと思えるきっかけになればと思います。

次に起こりやすいこと

このように負担や疲れが溜まっている状態でも、「休むほど頑張っていない」「まだやらないといけないことがたくさんある」と自分を追い込んでしまう方は、うまく休むことができず、不安や焦りを抱え続けてしまいます。
その結果、「どうして自分だけできないんだろう」「前は普通にできていたのに」「こんなこともできない自分はダメだ」と、自分を責める考えが次第に強くなってしまいます。
「頑張っているのに、思うように動けない」その経験が重なるほど、「もっと頑張らなければ」と焦り、さらに悪循環へと引き込まれてしまいます。やがて、

  • 仕事に合わせて朝起きるのがつらい
  • 仕事に行こうとすると吐き気がする
  • 休日も漠然とした不安が頭から離れない

といったように、日常生活にも支障が出るようになり、さらに進んでいくと、仕事を続けること自体が苦しい状態へとつながっていきます。
次の記事では、「頑張りたいのに、朝がこわい」と感じるあなたへ
と題して、朝になると仕事に向かうことが怖くなったり、強い負担を感じるときに、どのような変化が起きているのかを整理していきます。

執筆者

臨床心理士・公認心理師
医療・教育・司法・産業など幅広い領域で、20年以上心理支援に従事。
認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を行っています。
詳細なプロフィールはこちらをご覧ください。